推しという言葉は、「誰でも会いに行けるアイドル」をコンセプトに結成されたAKB48が握手会をはじめた頃から、アイドルオタクを中心に徐々に広まっていったとされます。

推しは今、10代~20代の女性の約70%にいるといわれています。推しを応援する活動を表す「推し活」に励む人たちをターゲットにしたサービスやメディアも相次いで公開されています。また、2021年に芥川賞を受賞した小説『推し、燃ゆ』や、2021年の流行語大賞に「推し活」がノミネートされるなど、推しまたは推し活という言葉は徐々に一般的な知名度を上げてきています。

推し活応援メディア・Oshicoco(@oshikatsu_media)を運営している、株式会社Oshicocoの多田夏帆さんに「推し活」とは何かお聞きしました。

推し活とは?

推し活は、自分の推しを応援する活動です。

例えばSNSで情報を集めたり、ライブや配信などのイベントに参加したり、推しの写真とかバッジを集めて、バッグとかうちわとかいろんなグッズを作ることなどです。

NetflixやAmazonプライム、U-NEXTで動画を視聴したり、映画館にいって映画を観ることも推し活です。

推し活では、お金や時間のやりくりが本当に欠かせません。また、推しに会ったときのために、ダイエットや美容に力を入れる、自分磨きも推し活の一つだと考えています。

推し活ではSNSも使い分けてます。Twitterは推しに関する情報を集めたり推し活友達と交流したり、推しのハッシュタグをトレンドにするためなどリアルタイムに使います。

Instagramはカフェに推しのグッズを持って行っていったり、ロケ地巡りをしたりなど、推し活したときの写真を思い出として残しておくために使う人が多いです。

推し活と従来のオタクの違いとは?

推しとひと口に言っても、対象が本当にかなり幅広いことが特徴です。

私が運営してるメディアの方でも、スポーツ選手を推す人もいれば芸人さん、ネットを通じて活動してる人たちを推す人もいらっしゃいます。例えば、TikTokerとかYouTuber、ゲーム配信の人、ツイキャスの人ですね。そこが従来のオタクとの違いで分かりやすいポイントではないでしょうか。

オタクという言葉は、昔は主にアニメやアイドルを応援する人、あるいは「電車オタク」などという使われ方をしていました。それに、暗い、とか、見た目に気を使ってなさそうとか、オタクと呼ばれる対象にネガティブな印象を持っている方も少し前ぐらいまではいたように思います。

またオタクって言葉を使うことでファン活動を熱心にしている人自身の性格を否定するようなところが少なからずあったと思います。

それが推しのために行う活動に視点が変わることによってプラスのイメージに変わってきてる印象です。

自分が応援してる「活動」に重きが置かれてるところにも文脈の違いがあります。

スポーツ選手のオタクって今まで言わなかったと思うんですけど、「〇〇選手が大好きで推してるんですよ」って当たり前に使うようになってるところからも分かります。

それに対象が誰であれ応援するっていう気持ちを持っていればOKというか、どんな推し方をしていても正解だし、「こうしなきゃいけない」っていう厳密な縛りがあまりないですね。

タイ沼っていう言葉もあるように、推し活には深さもあります。「推し活」といっても結構グラデーションがありますね。

推し活が求められている背景とは?

日本の場合、会社員や学生、母親、父親っていう役割ごとに存在するロールイメージや望まれている姿の通りに生きなきゃいけないみたいな傾向が強くないでしょうか?

そういうものから抜け出したいっていうのが、推し活が求められる背景にあると思っています。

例えば、推しのCDを10枚買うとか缶バッジや写真を集めてバッグを組むことって、誰からも求められてない行動なんです。でもそれをあえてすることで、社会に対する小さな反抗をしていると私は思っています。

SNSの存在も非常に大きいです。SNSでのコミュニケーションを通して、自分の好きなものを語れる、世代も住んでる場所も異なる友達ができることは、いろんな自分の家族や学校っていう社会から飛び出すことができて自分の視野も広げてくれます。

私が運営してるメディアのフォロワーさんには中高生の人も結構多いです。

ライブに行くときは普段より着飾っておしゃれをしてるから、学校にいるときの自分とライブに行くときの自分は全然違う姿になれているんですね

オタクをしている自分、推し活をしてるときの自分は何者でもないけど、家族や学校とは違うコミュニティーにいることによって、本来なりたい姿になれる。

そういうのが今、世代を問わず一番望まれてるんじゃないかなと思います。

推し活は一般化するのか?

これからの時代、推し活は恋愛などのライフイベントと並ぶくらいに当たり前になっていくと予想しています。例えば恋愛する、結婚するもしくは生涯独身を貫く、ペットを飼うといったいろんな選択肢が人生の中で出てくるんですけど、それと同じレベルで推し活をするという選択肢が出てくるでしょうね。

推し活をすると、今の社会に引かれている、国境とか次元とか性別っていうさまざまな境界線を軽々と飛び越えていけます。世の中の人が推し活をすれば、推し活っていう言葉もなくなる時代が来るかもしれないですね。自己紹介とか雑談で「趣味は何ですか?」「好きなものは何ですか?」って聞かれるかもしれないんですけど、それと同じ感覚で「推し誰ですか?」と聞けるくらいにはなるんじゃないでしょうか。

自分の好きなものや人を語ること、仲間が見つかることはプラスのエネルギーを秘めていて、それが集まることで、社会を良くするパワーに置き換えられていく気がします。

社会的に受け入れやすい風土が整いつつあるとはいえ、まだまだ残るオタクに対する偏見やマイナスイメージをプラスに変えていきたいとの思いで、これからも推し活応援メディアを運営していきたいと考えています。

This article is a sponsored article by
''.