国際標準規格に認定されており、デジタル文書形式のスタンダードであるPDF。日々の仕事では当たり前のような存在です。しかし、「受け取ったPDFを編集したい」「Excel/Wordに変換して再利用したい」といった場面でもどかしさを経験したことがある方もいるのではないでしょうか。環境に左右されずに誰でも閲覧できるのが強みな一方で、編集といった操作には一手間必要です。今回は、明日から無料で実践できるPDFの編集・変換のテクニックを紹介します。
PDFを使うメリットや編集ツール
PDFは文字や図形、表などを印刷するためにレイアウトされたページの状態を保存するためのファイル形式です。印刷して表現される文書のデザインやレイアウトなどの情報をほぼそのまま表現することができます。
PDFにはほかにも次のようなメリットがあります。
・どんな環境(デバイス・OS)でも表示できる
・レイアウト崩れが起こりにくい
・データサイズが小さいため容量の負担を減らせる
・パスワード設定やデジタル署名によって文書の機密性を高められる
無料で使えるツール
便利で様々なビジネスシーンで活用されているPDFですが、編集をするには専用のツールなどを使う必要があります。とはいっても、無料/有料のツールやオンラインツールがあり、オンラインツールであればダウンロード不要で簡単に使うことができます。ここでは、無料で使えるツールを5つ紹介します。
Adobe Acrobat

PDFを開発したAdobe社のツールです。基本の物から高度なものまで25種類以上の便利な機能を備えており、無料で試すことができます。
iLovePDF

登録なしに、基本的な操作を一通りすることができます。シンプルな機能性と見た目で分かりやすく、手軽に操作できるのが特徴です。
Smallpdf.com

登録なしに使うことができ、シンプルな機能性と見た目で手軽に操作することができます。AIの機能も備わっており、要約やPDFとのチャット、問題生成などが可能です。
Canva

無料でも利用できるクラウドデザインツールです。直感的にわかりやすい操作性で、PDF以外でも幅広く活用することができます。
HiPDF

AIを搭載していることが特徴です。AIによる要約や概要の生成、PDFと会話、チェッカーといった機能を活用することができます。
PDF編集の基本テクニック
PDFファイルは見るだけの電子文書ではなく、自由に編集することが可能です。その際に最も基本となる操作がテキストや画像の追加です。無料で比較的制限が少ない「iLovePDF
」を利用して、具体的な操作方法を紹介します。
テキストの追加
「すべてのPDFツール」から「PDFを編集」をクリックします。

ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

画面上部のツールバーから「テキストを追加」のアイコンをクリックします。

入力欄が表示されるので、文字を入力します。なお、ドラッグして文字を移動したり、上のツールから大きさや色などを自由に設定したりすることができます。

入力が完了したら「PDFを編集」ボタンをクリックし、「PDFをダウンロード」ボタンからダウンロードします。
図形の追加
画面上部のツールから「図形を追加」をクリックすると、追加できる画像の種類が表示されるので、追加したいものをクリックします。

追加する場所や図形の大きさ、色、塗りつぶしなどを自由に設定します。

図形とテキストを組み合わせることでより効果的な活用も可能です。

編集が完了したら「PDFを編集」ボタンをクリックすると、ファイルをダウンロードすることができます。
電子署名の追加
「すべてのPDFツール」から「PDFに署名」をクリックし、ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

自分の署名を追加するだけの場合は「私だけ」、他の人に署名を依頼したい場合は「複数の人」を選択します。ここでは「私だけ」を選択します。

署名したいフルネームまたはイニシャルを入力し、「適用」をクリックします。

右側のメニューに署名が表示されているので、入力したい箇所にドラッグアンドドロップすると追加することができます。ドラッグして自由に移動したり、大きさを変えることもできます。なお、署名の内容は「必須欄」の名前の横にあるえんぴつアイコンからいつでも編集が可能です。

完了したら「署名」ボタンをクリックするとファイルがダウンロードされます。
PDF結合・分割・編集
PDFのデータを取り扱っている時に「このPDFデータを一つにまとめたい」「この1ページだけのデータがほしい」「ページを削除したい」といった思いを抱いたことはありませんか?実はそれも簡単にすることができるのです。
複数のPDFを1つにまとめる
「すべてのPDFツール」から「PDF 結合」をクリックします。

複数ファイルをまとめて選択、あるいはアップロード後の画面で「+」のアイコンから別のファイルを選択してアップロードします。

アップロードが完了したら「PDF 結合」ボタンをクリックしてファイルをダウンロードします。
必要なページだけを抽出する
「すべてのPDFツール」から「ページを抽出」をクリックし、ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。
アップロードが完了したら抽出したいページをクリックして選択、または右側のメニューの「抽出するページ」でページ番号で指定します。
「PDF 分割」ボタンをクリックし、「分割されたPDFをダウンロード」をクリックすると、指定したページのデータをダウンロードすることができます。

ページの入れ替え・削除
「すべてのPDFツール」から「PDFを編成」をクリックし、ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

ドラッグでページの入れ替えや、ページ右上のボタンからページ削除、右側の「+」アイコンからファイルの追加などが可能です。


操作が完了したら「編成」をクリックするとデータがダウンロードされます。

PDF変換・抽出のテクニック
PDFの内容をWordやExcelなどに変換して内容を編集したい場合もあるでしょう。そんな時にはツールを用いて簡単に変換することが可能です。
PDFからほかのファイル(Word・Excel・Power Point)に変換
「すべてのPDFツール」から「PDF WORD 変換」をクリックし、ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

アップロードされたら「WORDに変換」をクリックするとファイルがダウンロードされます。なお、同様の方法でExcelやPower Pointに変換することが可能です。

表データの効率的な抽出方法
PDF内の表データを抽出したい場合は、一度Wordに変換してからExcelに貼り付けるのがおすすめです。そうすることにより、セルの結合といった書式情報を維持したまま貼り付けが可能です。
まず、ダウンロードしたPDFをWordに変換します。

抽出したい表の部分を選択してコピーします。

Excelを起動し、右クリックで「元の書式を保持」を選択して貼り付けます。最後に、幅などを適宜調整して整えたら完了です。

ほかのファイル(Word・Excel・Power Point)からPDFに変換
「すべてのPDFツール」の「PDFに変換」から、変換元のデータ形式に合わせてメニューをクリックします。ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

アップロードされたら「PDFに変換」をクリックするとファイルがダウンロードされます。
画像の抽出
「すべてのPDFツール」から「PDF JPEG 変換」をクリックし、ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

右のメニューから「画像抽出」を選択し、「JPGに変換」ボタンをクリックすると画像をダウンロードすることができます。

OCR機能を活用した画像PDFからのデータ取り出し
OCR(文字認識)とは、PDFファイルの文字をテキスト化する機能のことです。これにより、手動で入力する手間が省けたり、データ管理がしやすくなったりするメリットがあります。この手順も簡単です。
「すべてのPDFツール」から「OCR PDF」をクリックし、ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

右側のメニューから言語を選択し、「OCRを適用」をクリックします。適用されたPDFをダウンロードすると、文字の検索や選択ができるようになっています。

ワンランク上のPDF活用術
基本的な操作からワンランク上のPDFの活用や操作のテクニックを紹介します。
有料ツールを活用したPDF編集
PDFを編集するツールには有料で様々な機能を備えているものもあります。中でも、PDFを開発したAdobe社が提供しているのがAdobe Acrobatです。無料版もありますが、有料版を使うことでより高度な編集ができるようになります。
プランには、無料版の「Adobe Acrobat Reader」と有料版の「Adobe Acrobat Standard」「Adobe Acrobat Pro」があります。無料版ではPDFの表示、印刷、共有、コメントの追加ができますが、有料になるとPDFのテキストや画像の編集、電子署名の依頼、パスワード保護、ファイル変換、データ軽量化、フォームの作成などより多様な機能を利用することができます。無料ではできない機能を頻繁に使いたい場合は契約を検討すると良いでしょう。
また、このツール以外にも「PDF 編集」などで調べると無料・有料問わず様々なツールがあります。個人的な利用や小規模な利用であればコストを抑えて編集することが可能なため、まずはそういったツールを利用してみるのもよいでしょう。
PDFフォームへの入力
PDFフォームとは、テキストの入力欄やチェックボックスがあり、直接入力が可能なPDFファイルのことです。PDFファイルを開くだけでテキストを入力できる状態になっており、フォームの管理者にとっても回答者にとっても、手間を減らすことができます。
作成するためにはAdobe AcrobatやWondershare PDFelementなどで有料プランを契約する必要がありますが、入力は誰でも可能なため、ここでは入力の方法を簡単に紹介します。
参照:weband66.com「「入力できるPDFフォーム」のサンプルです」(__%%http://www.weband66.com/pdf/sample.html%%{blue}__
)
PDFフォームを開くと、その画面からそのまま入力することが可能です。薄く色がついている箇所が入力欄になっています。


入力後はダウンロードのアイコンから変更後のPDFをダウンロードすることができます。
PDFのセキュリティ対策
PDFは取り扱いが簡単だからこそ、重要なデータや機密情報が入っている場合は特に注意が必要です。PDFには公式な文書にも対応できるほど強固なセキュリティ機能が備わっており、それによってPDFの不正な利用を防ぐことができます。ただ、そのような設定は有料版のツールでしかできない場合が多いため、高度なセキュリティ対策をしたい場合は契約するのがおすすめです。ここでは、基本的なセキュリティ設定の方法を紹介します。
パスワード保護の設定
「すべてのPDFツール」から「PDFを保護」をクリックし、ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

右側のメニューで保護用のパスワードを設定し、「PDFを保護」ボタンをクリックします。この設定により、このPDFを開く際にはパスワードが求められるようになります。

編集できないようにする
PDFファイルを右クリックし「プロパティ」を選択します。「全般」のタブを開き、「読み取り専用」にチェックを入れて保存します。これにより編集できないようにすることが可能です。

機密情報の墨消し(リダクション)
墨消しとは、文書内の情報を削除したり見えなくしたりすることです。個人情報や機密情報を保護したい場合に使用します。
「すべてのPDFツール」から「PDFを墨消し」をクリックし、ドロップまたは「PDFファイルを選択」からファイルをアップロードします。

墨消ししたい文字をドラッグして選択します。

選択が完了したら「墨消しする」ボタンをクリックしてファイルをダウンロードします。ファイルを開くと、選択した箇所が黒で塗りつぶされていることが確認できます。

まとめ
今回は、PDFを編集・変換するためのテクニックを紹介しました。無料ツールを使った簡単にできるものだけでもこれだけのテクニックがあり、これ以外にも様々な編集・活用の方法があります。
「あんなことができたらいいのに」という思いを実現できるような便利な機能もあり、「PDF 編集」や「PDF ○○(やりたいこと)」で検索すると、それができるツールが見つかるかもしれません。中には無料でできるツールもあるので、PDFをもっと活用するためにやりたいことがあればぜひ探してみてください。
また、今回紹介したものはどれも明日から実践できるものです。仕事でPDFを使う方はどれも知っておきたいテクニックなので、積極的に試してみてください。