本記事では「生成AI時代の検索術」シリーズの第1回として、検索エンジンで情報収集するためのテクニックを解説します。生成AIの普及によって、情報収集のあり方が大きく変わりつつあります。ChatGPTやGeminiなどのAIが瞬時に答えをくれる今、GoogleやBingといった検索エンジンに必要性を感じなくなってきている方もいるのではないでしょうか。しかし、そんな時代だからこそ、それぞれの特性を理解し、使いこなすスキルの重要性が増しているのです。今回は、生成AIと検索エンジンの使い分け方から、検索エンジンを使う際の情報収集テクニック、ビジネスシーンで使える検索式まで、的確に情報を集めるための方法を解説します。

生成AIと検索エンジンの使い分けの重要性

生成AIとは、大量のデータから学習したモデルを使って人間のような文章を作り出すAIツールのことです。対してGoogleやBingといった検索エンジンは、インターネット上のWebページをキーワードで検索し、関連する既存の情報を一覧で提示してくれます。どちらも情報を得る手段ですが、その仕組みと得意分野には違いがあります。

生成AIは質問に対して自然な文章で答えをくれますが、その情報の信頼性や最新性は確かなものとは言えず、ソースの確認が欠かせません。一方で検索エンジンは、一次情報に直接アクセスすることができるため、信頼性や最新性のある情報を集めやすいという特徴があります。

これらの特徴を踏まえ、シーンに合わせた使い分けや併用することが重要です。具体的にどのような場面で使い分け、活用ができるかを紹介します。

生成AI

生成AIは最終的なアウトプットの土台作りや、情報をまとめるために使うのが効果的です。例えばアイデアを出したりブラッシュアップしたり、資料やメール文の案作りで役立つでしょう。ただし、生成AIの回答は必ずしも正確とは限らないため、見直しやソースの確認は必ずしましょう。

【活用シーン例】

・アイデア出し
・要約
・ドラフト作成
・意見の整理や構成の提案
・会議音声の書き起こしや要点整理

検索エンジン

公式情報や正確さが求められる場面では検索エンジンを使うのが効果的です。例えば法令や公式マニュアルの確認、最新ニュースの収集、競合企業のWebサイト調査などでは検索エンジンが強みを発揮します。検索結果から自分で情報源を確認できるので、情報の裏付けや比較検討が必要な場合にも有効です。

【活用シーン例】

・公式発表の検索
・ニュースの検索
・一次情報の確認
・専門的な資料/情報の検索
・統計データの検索

基本から学ぶ検索演算子

検索エンジンを使いこなすには、検索演算子と呼ばれる特殊な文字やキーワードを活用しましょう。これらを組み合わせることで細かく検索結果をコントロールできるため、通常のキーワード検索よりも精度高く欲しい情報を絞り込めるようになります。ここでは代表的なものを6つ紹介します。なお、演算子はGoogle検索をはじめ多くの検索エンジンで利用可能なため、これらを覚えておけばほかでも活用することができます。

" "(完全一致検索)

ダブルクォーテーションで囲んだキーワードの完全一致検索を行います。例えば、「"プロジェクト 管理 マニュアル"」のように検索すると、その文字列を含むページのみがヒットします。複数の単語を確実に含む文章や、正確なフレーズ(商品名など)を探したいときに便利です。

site(サイト・ドメイン指定検索)

「site:ドメイン キーワード」で特定のサイトやドメインに対象を絞って検索します。ドメイン部分にgo.jpを指定すれば日本の政府サイト、ac.jpなら大学など学術機関サイトから情報を探すことも可能です。特定企業のサイト内や官公庁の公式発表だけを調べたい場合などに役立ちます。

filetype(ファイルタイプ指定検索)

「filetype:拡張子 キーワード」で特定のファイル形式の資料に絞って検索できます。例えばPDFやWord(doc/docx)、Excel(xls/xlsx)、PowerPoint(ppt/pptx)などが指定可能です。統計やレポート、論文などを探す際に役立ちます。

OR(複数キーワード指定検索)

どちらか一方のキーワードを含むページを検索します。関連する別表現や英語・日本語の両方で検索したいときに使うと便利です。例えば、「DX OR デジタルトランスフォーメーション」と検索すれば、そのいずれかを含むページがヒットします。

**-(キーワード除外検索)**

「キーワード -除外キーワード」で、特定のキーワードを除外して検索できます。多義語で不要な検索結果が混じる場合や、特定のサイト、商品を除外したい場合に役立ちます。

*(あいまい検索)

キーワードの一部が分からない、複数のバリエーションを試したい場合にワルドカード記号(アスタリスク)*を入れることであいまい検索が可能です。任意の文字の代わりになるため、商品名や企業名が思い出せないときなどに役立ちます。

検索フィルターの徹底活用法

検索演算子と並んで活用したいのが、検索エンジンに備わっている検索フィルターです。検索結果に対して追加のフィルターを適用して絞り込むことができます。多くの検索エンジンでは、検索結果ページに「ツール」や「検索オプション」といったボタンがあり、そこで期間や言語などのフィルター設定ができます。ここではGoogleの場合を紹介します。

画像1: 検索フィルターの徹底活用法

言語設定

日本語のみ、または全ての言語を指定することができます。

期間指定

過去1時間、24時間、1週間、1か月、1年、その他カスタムで検索期間を指定することができます。特に、技術やトレンドに関する内容は数年前の記事では古くなっていることもあるため、期間を指定して検索するのが有効です。

完全一致

全ての結果か完全一致

検索地域

表示結果の地域を指定可能(例:米国、日本など)

詳細検索

詳細検索をクリックすると、より細かく設定することが可能です。

画像2: 検索フィルターの徹底活用法

ビジネスシーンで使える検索式10選

ここからは、実際のビジネスシーンで役立つ検索式の例を10個紹介します。どれも日常業務ですぐに試せるものなので、自分の業務の中で使えそうなものからぜひ使ってみてください。

取引先などの会社情報を検索する

お客様との商談前などの際は情報収集が欠かせません。そんな時に役立つのが「site」演算子です。会社のWebサイトを指定して検索することで、埋もれていた情報まで収集することができます。

資料作成時のエビデンス収集

レポートや会議資料、商談資料の作成において誤った情報を使うのは命取りです。そんな時にも「site」演算子による検索が強い味方になります。go.jpやgov、ac.jp、eduといった公式性の高いドメインを指定し、信頼性の高い情報に絞りましょう。

リサーチの際に他社のレポートや統計資料を取得する

業界分析や市場調査などのリサーチの際は「filetype」演算子によるファイル形式検索が役立ちます。「製品名 市場規模 filetype:pdf」のように検索することで、PDF形式の市場調査レポートなどがヒットしやすくなります。同様にプレゼン資料や統計データの検索など、目的に応じた形式で絞り込むことで必要な情報の見落としを防ぐことができます。

事例や他社のプレゼン資料を探す

他社の過去の事例や、参考になりそうな資料を探したい場合もあるでしょう。そんな時はファイルをスライド資料に指定することで、過去のデータを収集しやすくなります。例えば「filetype:ppt ESG 経営」と検索すれば、ESGに関する経営資料やレポートを探すことが可能です。

正確なフレーズで素早く回答を探す

知りたいことがはっきりしている場合は、フレーズ全体をダブルクォーテーションで囲んで完全一致検索をすると効果的です。例えばエラーメッセージが出た際に"エラーメッセージ全文"と検索すれば、ピンポイントで解決策を探すことができます。

不要な情報を除外して効率アップ

一般的な単語や略語で検索すると、関係のない結果も含まれた状態のままです。そんな時に-演算子でノイズとなるキーワードを除外しましょう。例えば、「Webマーケティング -広告」と検索することで、広告以外のWebマーケティング情報を抽出することができます。

類義語や関連語も漏れなく検索する

専門用語には言い換え表現が複数ある場合もあります。漏れなく情報収集するにはOR検索を使ってみましょう。例えば日本語と英語のキーワードをORでつないで二ヶ国語同時検索することで、幅広い情報収集が可能になります。

最新情報の入手

技術や法律など常に更新がある分野では、最新情報かどうかが肝心です。Googleの期間フィルターやafter:コマンドも活用しましょう。

"市場動向" AND 2024 site:toyokeizai.net:今年の市場トレンド記事

少し前のトレンド記事を調べる

最新情報と反対に、数年前のトレンドや、一世代前の情報を集めたい場合もあるでしょう。そのような場合は、期間指定や「before:」をつけての検索が便利です。例えば「20代 ファッション before:2022-12-31」と検索すれば、2022年以前の情報に絞り込むことができます。

有益な情報が見つからない場合に言語を変えて検索する

例えば、プログラミングに関する情報やテクノロジーに関する情報など、日本語で調べてもピンとくる情報が見つからない場合もあります。そんな時は、英語に切り替えて検索すると有益な記事が見つかることがあります。

【実践ガイド】自分だけの検索式テンプレートの作り方

情報収集の効率化には、よく使う検索パターンをあらかじめテンプレートにしておくと情報収集のスピードが格段に上がります。演算子やフィルターを使って自分だけのテンプレートを作成するステップを紹介します。

(1)検索の傾向を探る

まずは仕事内容を振り返ったり検索履歴を見たりして「どんな情報を頻繁に探しているか」を知りましょう。例えば、担当しているお客様や競合の会社の情報や、特定の分野の最新情報など、普段よく探している情報をピックアップします。

(2)よく使うキーワードを整理

次に、よく探す情報に合わせた検索パターンを考えます。ここで重要なのが、自分が毎回手動で設定・入力している条件をテンプレート化してしまうことです。例えば最新情報を探しているのであれば「キーワード + 過去1週間のフィルター」、競合のプレスリリースなら「site:competitor.com 発表」のように、最適な検索式を組み立てます。

(3)テンプレートの保存

検索式ができたら、すぐ使えるように保存しておきましょう。メモ帳アプリやドキュメントに一覧化するのも良いですし、ブラウザのブックマークに検索URLのまま保存しておくのも便利です。

(4)実践と調整

作ったら意識的に使うようにしましょう。そして、「もう少し絞り込みたい」「欲しい情報と違う」と感じたら、演算子を追加したりキーワードを変えたりして調整します。一度作ったら終わりではなく、使いながら改良していくことでどんどん使いやすくしていきましょう。

おわりに

生成AI時代において、検索エンジンを使いこなすスキルは強力な武器になります。検索演算子やフィルターといったテクニックを知り、自分だけの検索式を準備しておくことで、どんどん情報収集力は向上します。「生成AI時代の検索マスター術」シリーズでは、さらなるテクニックを紹介していく予定です。ぜひ次回もご覧ください!

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