本記事では「生成AI時代の検索エンジン活用術」シリーズの第3回として、情報の信頼性を見極めるためのテクニックを解説します。検索エンジンやSNSなど、様々な情報源がある今、「どこから・どのように情報を得るか」という情報を得るスキルに加え、「その情報は確かか」を判断するスキルも非常に重要です。では、どのように情報の信頼性を判断すればよいのでしょうか?今回は、見極めるテクニックやすぐに実践できるチェックリストを紹介します。
情報のソースの種類と特徴
そもそも、インターネット上の情報には様々なソース(情報源)があり、その種類によって信頼性や活用方法も異なります。まずはそれぞれの概要や特徴を知っておきましょう。
一次情報
直接的な体験や独自の調査・実験によって得られたオリジナルな情報です。元の事実や出来事に直接当たっているため独自性と信頼性が高いと言えますが、専門的で理解が難しい場合もあります。
(例)政府や自治体が公開する統計データ、研究者が発表する論文、企業の公式プレスリリース、記者による現地取材記事
二次情報
他者の一次情報を元に分析・解釈・要約した情報です。一次情報に解釈や評価、考察が加わるため、客観性が劣る場合があります。重要な意思決定に活用する際は、可能な限り一次情報にあたって内容を確認するようにしましょう。
(例)一次情報を元に書かれたニュース記事、研究結果を分析して発表された学術論文、歴史的な資料を元に作られた本
三次情報
発信源が確かでなく、“噂話”とも言えるレベルの情報です。信頼度は非常に低く、鵜呑みにするのは危険です。インターネット上だけでなく、一部の雑誌や本などにも記載されている可能性があります。
(例)人から聞いた情報、SNSの投稿から知った情報
SNSの情報
XやInstagram、YouTubeなどSNS上で個人が発信する投稿や画像・動画による情報です。SNS上には信ぴょう性が不確かな情報も数多く含まれる一方で、公式アカウントや一次情報を元に発信されている場合もあります。そのため、発信者が信頼できる人物(公式アカウントや専門家によるものか)であったり、複数の信頼できる媒体で裏付けできたりすれば、信ぴょう性の高い情報だと言えます。
生成AIによる情報
AIによって生成された文章や画像などによる情報です。生成AIの普及に伴い、ウェブメディアの記事やSNSの投稿など、様々なところでAIが生成した情報が使われるようになっています。AIは便利な反面、もっともらしいが事実と異なる誤情報を生成してしまうこと(ハルシネーション)や、著作権に注意が必要な場合もあります。そのため、AIが出力した情報をそのまま鵜呑みにせず、必ず他の信頼できる情報源で事実確認を行うことが重要です。
検索結果の信頼性を判断するためのチェックポイント
検索して上位に表示された情報やSNSで見た情報が必ずしも正確で信頼できるものとは限りません。では、どのようにして検索結果の信頼性を判断すればよいのでしょうか?誤情報に振り回されると、予期せぬトラブルを招きかねません。検索結果が信頼できるかどうかを確認・判断することは非常に重要です。ここでは、その情報の信頼性を見極めるためのチェックポイントを紹介します。
情報源と著者
その情報が「誰が」「どこから」発信しているかをチェックしましょう。公式サイトや政府機関、大学などの一次情報源から提供されている場合や、執筆者がその分野の専門家である場合は信頼性が高いと考えられます。一方で、出典が不明瞭な記事や匿名の個人ブログなどの場合は、裏付けが取れるまでは取り扱いに注意が必要です。
情報の新しさ
公開日や更新日も必ず確認しましょう。特に技術や制度、法律のように更新される分野では、古い情報は現状にそぐわない可能性があります。古い情報しか知らないと、最悪の場合は法令に抵触してしまうことも考えられます。重大なトラブルやインシデントを防ぐため、最新の情報にアップデートされているかをチェックし、必要に応じて新しい情報源を探すようにしましょう。
内容や表現の客観性
記事のタイトルや本文が煽情的すぎないか、あるいは極端な主張になっていないか確認しましょう。客観的でデータに基づく記述は信頼性が高い一方で、感情的な言葉遣いや偏っている内容には注意が必要です。見る人の注意を引くために誇張していたり、発信者の主観が強く混ざっていたりする可能性があります。極端に不安をあおる表現や、「絶対に〇〇すべき!」といった断定的な語り口には注意しましょう。
他の情報源にも掲載されているか
その情報が一つのウェブサイトだけでなく、他の信頼できる情報源にも掲載されているか確認しましょう。複数の独立したソースが同じ内容を示していれば、情報の信ぴょう性は高まります。逆に、そこでしか見つからない情報は慎重に判断した方がよいでしょう。
「フィルターバブル」を意識した情報収集法
ウェブ検索やSNSは便利な反面、「フィルターバブル」と呼ばれる現象に注意が必要です。フィルターバブルとは、検索エンジンやSNSのアルゴリズムがユーザーの興味関心に合わせて情報を選別表示することです。
この状態では、自分が欲しい情報のみが表示され、異なる視点の情報に触れる機会が減り、気づかないうちに偏った情報環境に陥ってしまう恐れがあります。さらに、自分の信念を裏付ける情報ばかりを集めてしまい、批判的な思考や客観的な判断力が低下してしまうリスクもあります。
フィルターバブルを完全に避けることは難しいですが、より客観的に情報収集を行うために、次のような対策が有効です。
プライベートモードを活用する
検索履歴や閲覧履歴を残さないモードで検索・閲覧することで、過去の自分の行動に影響されにくい結果を得ることができます。例えばChromeの「シークレットモード」やSafariの「プライベートブラウズ」を使えば、パーソナライズされた検索結果の影響を最小限にできます。
アルゴリズム機能をコントロールする
SNSには、ユーザーの好みに合わせてコンテンツを表示するアルゴリズムが組み込まれています。この仕組みを知り、コントロールすることで、表示される情報の偏りを減らすことができます。Xでは「このポストに興味がない」の選択や「表示するコンテンツ」から変更することができます。また、検索エンジンはパーソナライズド検索をオフにすることが可能です。
複数の情報源を確認する
ウェブ検索だけに頼らず、意識的に多様なメディアから情報収集しましょう。インターネット上の情報だけでなく、テレビや新聞、雑誌なども目を通すと視野が広がります。また、英語など他言語の情報源を調べてみるのも有効です。
異なる視点や意見を積極的に探す
自分がフォローしていない分野の投稿やブログを読んでみたり、自分とは異なる意見に目を向けたりすると、情報の偏りを減らすことにつながります。自分の好む情報の外に意識的に目を向け、客観的に情報を判断するようにしましょう。
検索エンジン以外の情報源の活用方法
情報収集といえば検索エンジンでキーワード検索する方法が定番ですが、SNSや専門フォーラム、Q&Aサイト、YouTubeなどの動画プラットフォームなども貴重な情報源になり得ます。それぞれの活用方法や注意点を紹介します。
SNSでの情報収集
XやInstagram、FacebookといったSNSでは、検索エンジンでは得られないリアルタイムな情報が手に入ります。例えば、電車の遅延や災害時の状況、流行中のトピックなど、その瞬間の生の声を聞くことができます。また、商品やサービスの口コミを調べる際にも、リアルな声が見えやすいSNSは有効な手段と言えるでしょう。
しかし、SNSではデマや偏った情報が出回っていることも少なくありません。SNSで見つけた情報は他のニュースサイトや公式発表と照らし合わせて裏付けを取ったり、異なる意見の投稿にも目を通したりすることが重要です。
専門フォーラムやQ&Aサイトの活用
業界や趣味ごとの専門フォーラム(意見交換や情報共有ができる場)やYahoo!知恵袋のようなQ&Aサイトでも有用な情報を得ることができます。こうしたプラットフォームでは実際の経験に基づく知見やユーザー目線のアドバイスが得られるメリットがあります。
ただし、回答者や投稿者の知識レベルも様々で、中には誤った情報や個人の推測が含まれる場合もあります。そのため、複数の投稿者の意見を比較しつつ、本当に有効な情報か見極めるようにしましょう。
動画・音声プラットフォーム
YouTubeやTikTok、ポッドキャストなども情報収集の手段として有効です。特に操作方法の説明や料理レシピなど視覚的に学びたい内容は動画から得ると理解しやすいでしょう。ただし、動画や音声の場合も情報源の確認は不可欠です。信頼性の高い情報か、個人の主張なのかを見極めるようにしましょう。
チャットAIの活用
最近はChatGPTのような生成AIを使ったチャットボットで情報を調べる人も増えています。AIに質問すれば瞬時に答えが返ってくるため一見便利ですが、必ずしも正確ではない点に注意しましょう。チャットAIを情報源として使う場合は参考程度にとどめ、その内容をさらに自分で検証することが必要です。
【実践ガイド】情報のファクトチェック手順
最後に、実際に得た情報の信頼性を自分でチェックするための簡単なチェックリストを紹介します。次の5つの項目についてYes/Noで判断してみましょう。「Yes」が多い情報ほど信ぴょう性が高いと言え、「No」がある場合はそこを補える情報を調査しましょう。

(1)情報源は明確か?
情報源は明確になっていますか?例えば、Web記事であれば筆者名や引用元が記載されているか、SNS投稿であればソースが示されているかをチェックしましょう。
(2)その情報源は信頼できるか?
情報源は専門性・権威性のある人物または組織ですか?政府機関や公的な研究機関、専門家・資格保持者などによる発信であれば信頼度は高まります。一方で、匿名の個人や実績のないサイトの場合は注意が必要です。著者について調べ、その人の経歴や専門分野が情報内容と合致しているか確認しましょう。
(3)裏付けとなる根拠が示されているか?
具体的なデータや出典(統計データ、調査結果、参考文献リンクなど)は示されていますか?例えば「〇〇の効果がある」と書かれている場合は、その根拠となる実験結果や専門家の判断が提示されているかを確認しましょう。可能な場合はその一次情報が示されているサイトの内容も確認するとよいでしょう。
(4)他の信頼できる情報源と矛盾していないか?
そのサイトだけが示している情報でないか、他の信頼できるソースと照らし合わせてみましょう。大多数の専門家や公式発表が支持する内容と真逆のことを主張しているなど矛盾がある場合は、慎重な判断が必要です。新しい発見や異論が間違いとは限りませんが、自分で判断できない場合は専門家の意見やファクトチェック機関の見解を探してみるとよいでしょう。
(5)内容は客観的で偏っていないか?
情報の書きぶりが偏っていないか、感情的表現が含まれていませんか?客観的な言葉づかいやデータに基づく説明がなされていれば信頼性は高く、感情的・扇情的な表現が多ければ信頼性が低い可能性があります。また、特定の立場に肩入れしすぎているなど、意図的な誘導を感じる場合も慎重に判断するようにしましょう。
まとめ
近年は情報を得ることが容易になった反面、その取捨選択や信ぴょう性の判断がこれまで以上に重要になっています。今回紹介したチェックリストを参考に、検索をする際に情報の信頼性を客観的に判断する習慣を身につけましょう。情報社会の中で情報の信頼性を見極められるスキルは、仕事でも生活でもきっと活きるでしょう。