仕事をしているとき、別の仕事を思いついてそちらに気を取られてしまったり、仕事を終えてからも、何かやり残した仕事があるような気がしたりするなど、頭の中を整理できずに困った経験をお持ちのかたもいるでしょう。

「GTD(Getting Things Done)」は、そうした問題を解決するために誕生した思考整理術です。混乱状態にある思考を整理するためにも、何らかの形で一旦アウトプットしたほうが頭はスッキリしますし、心にゆとりも生まれ、仕事への集中力も上がります。

今回はGTDについて、得られる効果や使える場面などを解説します。

GTDとは

GTDとは「物事を成し遂げる」という意味のある「Getting Things Done」の略語で、2001年にアメリカのコンサルタントであるデビッド・アレン(David Allen)氏が『Getting Things Done:The Art of Stress-Free Productivity』(※)という本で著した、個人の生産性を向上させるための実践メソッドです。アメリカをはじめ、世界のさまざまな企業で導入されています。

GTDは単にタスクを終えるのではなく、頭をより有効かつ有意義に使うことにフォーカスしており、これに基づいて導き出された5つのステップに沿って、頭の中にあるものを一度外に出した後、必要に応じて行動を起こします。

※日本語版タイトルは「はじめてのGTD ストレスフリーの整理術」

GTDの効果

GTDを日々の暮らしに採り入れると、どんな効果があるのでしょうか。

頭がスッキリして作業に集中できる

頭の中にあること、気になっていることを頭の中に留めておかずに、頭の外に置くというフローを通すことで、頭がスッキリして作業に集中できます。GTDは忘れるという脳の機能と、思い出す必要のない場面で達成していないことが気にかかるという心理現象(=ツァイガルニク効果)に着目して考案されたメソッドです。「気になること」として記憶に残り続けていることを、メモなどにして別の形に置き換えることで、心置きなく作業に集中できるのです。

タスクの放置を避けられる

GTDでは、一度記したタスクやアイデア、行動の整理を終えたものに対して、最新状態の維持、つまり振り返りを要求しています。可視化した事柄の振り返りを実施すると、タスクのステータスを把握できる他、タスクの放置を避けられます。

忘れることへのストレスの軽減

GTDの活用により、忘れてしまうことで感じるストレスを軽減してくれます。作業に取り掛かっていても、電話や来客対応、会議、休憩といった「割り込み」を処理するうちに、やるべきことを忘れてしまうケースがあります。GTDの行動リストにアウトプットしておけば、「メモをしたのでひとまず忘れてもよい。後で見返せる」という安心感を得られるとともに、忘れてしまう不安から解放してくれるのです。

GTDが使えるシーン

ここでは、日常生活の中でGTDを使えるシーンをいくつかご紹介します。

メールの整理

GTDメソッドは、メールの整理にも使えます。上司や同僚からの指示、他部署からの共有など、勤務先でメールを使わない職種はほとんどないと言っても過言ではありません。メールは送信元ごとにフォルダを作って整理しているケースが多いかもしれません。しかしこれでは、返信が必要なメール、不要でも内容を把握しておかなければいけないメールといった重要性の高いメールを見落としたり、探すのに手間取ったりしてしまうことも。

受信したメールを一読したあと、返信するべきかどうか、返信が必要であれば2分以内で返信できそうかを判断します。送信元で分けているメールフォルダから重要性が高く返信が必要なメール、重要性は高いけど返信が不要なメールとに分け、後者はゴミ箱に移動せず、それだけを集めたフォルダに移動させます。メールに書かれた情報の重要度の見極めと、返信可否の判断を正確に行うことが大切です。

買い物

家を出る前、あるいはネットショップサイトを開いたとき、「あれを買おう」と決めていたのに結局買えなかった経験は、誰しもあるでしょう。

そこで、日用品や食料品で購入しているものをメモにでも後述するツールにでもいいので全て書き出してみましょう。ネットショッピングであれば、購入履歴やお気に入り登録リストをチェックして、先ほどの購入しているメモに加えます。このとき忘れていたものは、思い出したときに記録しても大丈夫です。

そこから必要なものをピックアップしたリストを作成し、それを見ながら買い物をする、ただしリストにないものは買わないと決めておけば、無駄なものを買わずに済む上買い忘れもなくなるでしょう。

結婚にまつわる各種イベント

結婚やそれに向けた準備、新婚旅行までの各種イベントにも、GTDを活用可能です。

結婚は、決定事項や同時並行で進めることが数多くある一大イベントです。結婚式を挙げるのであれば、挙式のおおまかな予定やアイデア、着たいドレスのデザイン、招待客などを思いつく限りピックアップします。結婚式に関する情報収集を進めつつ、先ほど書いたアイデアをもとに作成したリストに沿って、期限と同時並行で進めなければならないことを決めていき、期限の近いことから着手します。

GTDの実践方法

デビッド・アレン氏が著したGTDのメソッド本の最新版(2015年)で、実践方法のステップのニュアンスが改定され、日本語版の公式サイトもこちらにならっています。しかし日本で検索サイトにて検索をかけると、2008年版で解説されている実践方法での記載が多く、混乱される方も多いかもしれません。ここでは、ステップを2008年版/2015年版を併記する形で解説いたします。

STEP. 1 収集/把握する

今自分が気になっていることを把握するために、物事の大小を問わず、私的なことも含めて頭の中にあることを全て書き出します。その日しなければならない仕事や用事、帰宅後や朝にする家事、推しや好きなアイドルのチェックなど、何でも構いません。いらない紙の裏や付箋紙、メモなどに手書きで書く、オンラインツールやアプリに入力するなどして頭の中を空っぽにします。

書き出したことは全て、In-box(インボックス)に保存します。In-boxとは、分類するためにタスクやアイデアなどをひとまず入れておく、仮の箱のようなものです。紙で書き出した場合はトレーに入れるかファイリングしておきましょう。写真として残すのでも構いません。パソコンやスマートフォンでツールやアプリに入力した場合は、リストや専用のフォルダなどを作りましょう。

STEP. 2 処理/見極める

STEP1で書き出し、In-boxに入れておいたものを見て、行動の必要または不必要を見極め、処理していきます。必要なものやことだと判断したら、リスト化して次に起こすべきアクションと段階の有無を明確にしましょう。2分以内にできそうな場合はすぐに実行し、それ以上かかりそうであれば「次にとるべき行動」リストを作成します。

不必要なことやものであると判断した場合、以下の3つに分けます。

  1. 捨てる:ラインを引いたり消したりする
  2. 保留(近いうちまたはいつかやる):何かに書き写す、リストを作成するなど
  3. 資料(後でやる、とりあえず書いておいたもの):資料としてファイリングしておく(STEP. 3へ)

STEP. 3 整理する

見極めた内容に沿って細かく整理し、優先順位を付けましょう。行動が必要でないと判断したものは、手書きであれば実施予定ごとにファイリングするなど、自分で分かるようにまとめておきます。

「次にとるべき行動」のリストは、内容ごとに仕事とプライベートとでまず分けて、複数の段階を踏むような作業は「プロジェクト」として整理します。それから優先順位をつけていき、納期や期日なども設定して優先度の高いものから順に並べていきましょう。定期的に発生することは、1週間おき、3ヶ月おきといった周期も確認します。

STEP. 4 更新する/レビュー

GTDは、単にタスクの完了を目指すものではなく、見極めて整理したタスクを定期的に見直す作業が必要とされます。まとまった時間を確保し、実行後のタスクや「次にとるべき行動」のリストを見直して(=レビュー)適宜更新しましょう。新たな課題や不要なタスクが見つかれば、全て反映します。このステップによって、頭の中を再度整理し、着手中の作業に集中できる状態を作り出します。

STEP. 5 実行/選択する

「次にとるべき行動」のリストの優先順位に従い、適切な行動を選択して着実に実行しましょう。行動を選択するときは、期日から逆算して実行に使える時間も確認します。

GTDの実践を助けてくれるツール

GTDの実践方法をスムーズに進行できるツールは、有料無料問わずいろいろあります。ここでは代表的なツールを3つご紹介します。

Todoist

Todoist(トゥードゥーイスト)は、Mac・Windowsを問わず、どのデバイスからでも使えるタスク管理ツール兼Todoリストアプリです。In-boxに対応しているので、タスクやアイデアなどを簡単に収集・整理できること、Todoistと連携しているアプリケーションの豊富さが特徴です。パソコンでは、ブラウザの拡張機能も利用できますが、アプリと拡張機能は利用できる機能が異なり、拡張機能の場合、WebページをTodoリストとして登録できます。リマインダーやラベル付け、フィルター機能は有料のみ使用可能なので、注意が必要です。

Chaos Control: GTD Organizer &

Chaos Control: GTD Organizer & -は、あらゆるデバイスやOSで使用可能なGTDベースのタスク管理アプリです。Chaos Controlでは、カオスボックス(思考を整理するためのIn-box機能)や定期的に発生する活動を管理するためのタスクマネージャーを中心に、プロジェクトGTDを実践するための機能が充実しています。Chaos Controlの同期機能を使えば、スマートフォンとパソコンでタスクを同期できます。

Trello

Trello(トレロ)は、ホワイトボードの上に貼った紙と付箋を左右に移動させたり剥がしたり追加したりするイメージで、リストやその上のカードを追加したり移動させたりすることでタスク管理する、オンラインツールです。リストの上のカードはラベル分け、画像やExcelなどのファイルも貼付できます。他にチェックリスト作成や期限の設定、ボードで実行したアクティビティから行動を学習して自動でルールを作成する「自動化」などの機能があります。

まとめ

GTDは目の前の作業に意識ごと集中させるために、自分の頭の中を占めてしまいがちなことをリスト化し、実行する手段であり考え方です。実践にあたってはSTEP1からSTEP5までを順にたどるのが理想ですが、個人や仕事内容などにより、フローや方法を工夫しても構いません。専用アプリやオンラインツールを使って、是非GTDにチャレンジしてみてください。

This article is a sponsored article by
''.