本記事では「生成AI時代の検索エンジン活用術」シリーズの第3回として、検索エンジンとAIの両者を活用した情報収集のテクニックを解説します。検索エンジンとAIは対立するものではなく、それぞれ特徴や良さを持ったものです。それらを上手にかけ合わせて活用することができれば、情報収集の効率や精度を飛躍的に高めることができます。そのように活用するためにどのようなテクニックがあるのか、どのような場面でどうかけ合わせることができるのかを紹介します。
検索×AIで情報収集するワークフロー
検索エンジンは最新情報や一次情報にアクセスできるのが強みですが、ヒットした複数のページを読んで精査するのには時間がかかります。一方で、生成AIは大量のテキストを短時間で要約したり、ポイントを整理したりするのが得意です。この両者を組み合わせ、それぞれの強みを生かすことで、効率良く必要な情報を得られます。検索エンジンで情報収集し、その結果をAIで要約・分析する一連のワークフローを紹介します。
(1)検索エンジンで下調べする
まずは知りたいトピックやキーワードについて、検索エンジンで検索します。必要に応じて検索演算子も活用し、有用そうなページを見つけたら、いくつか開いて内容を確認しましょう。
検索演算子についてはこちらの記事で詳しく紹介しているので、合わせてご覧ください。
(2)AIに要約させる
有用な記事やレポートを見つけたら、生成AIに要約してもらいます。AIは文章の重要な点を抽出し、短時間で概要をまとめてくれます。特に、長文でボリュームがある場合には全文を読む前にAIに要点だけまとめてもらえば、大まかな内容を素早く把握できます。要約結果を読めば、その情報が自分の求めるものか判断しやすくなるでしょう。
■プロンプト例
「以下の内容を箇条書きで要約してください」
「要点を3つにまとめてください」
※上記とともにリンクや文章を貼り付ける
(3)AIに分析・比較させる
(1)と(2)を繰り返し、複数の情報源からデータを集めたら、AIに分析や比較を依頼することも有効です。AIに分析してもらうことで自力で比較・分析する手間を省くだけでなく、見落としがちなポイントも洗い出せるため、リサーチの深みが増します。
■プロンプト例
「記事Aと記事Bの内容の違いは何か要約して教えて」
「○○業界の課題について、集めた情報を踏まえて分析してください」
(4)必要に応じて再検索
AIによる要約や分析結果を確認したら、新たに気になるキーワードや不足している情報が見つかることもあります。そこで再び検索エンジンに戻り、追加の情報収集をします。
AIの回答を検索で検証・補完するテクニック
生成AIは便利な反面、事実関係の誤り(幻覚やハルシネーション)が混じる可能性があります。また、学習データの範囲外にある最新情報には弱いことも指摘されています。そのため、AIの回答をうのみにせず、検索による裏付け確認をすることが重要です。それにより、最終的な情報の信頼性と完成度も格段に高まるでしょう。ここでは、そのためのテクニックを3つ紹介します。
重要な事実は複数の情報源でクロスチェックする
AIの回答中に統計データや固有名詞、年月日など事実に関する記述がある場合は、その部分を抜き出して検索エンジンで確認しましょう。検索してもそれらしい情報が見つからない場合、AIの回答が誤っている可能性があります。必ず他の出典を探し、最低でも2~3つの異なる情報源から裏付けを取るようにしましょう。
情報源の信頼性を確認
AIが引用や出典を示している場合、そのリンク先や情報源が信頼できるかをチェックします。可能であれば元データや発表資料を探しましょう。特に、医療や法律に関する内容の場合は、官公庁や大学のサイト(site:go.jpやsite:ac.jpなど)をサイト指定検索してみると、公的なエビデンスを見つけやすくなります。
AIの見落としを検索で補完
AIの回答が概ね正しい内容でも、十分に網羅されているとは限りません。そこで、ほかにも情報があるかもしれないと感じたら、自分で検索して補足情報を探します。そこでAIが触れなかった新たな観点や最新事例が見つかったら、それらを再度AIに教えます。そして「これらも踏まえて回答をアップデートして」とお願いすることで、より充実した回答にブラッシュアップすることができます。
検索とAIを組み合わせた効率的な学習法
検索とAIの併用は、調べ物だけでなく新しい知識やスキルの学習にも有効です。業務で新分野の知識を身につけたいときや、難解なテーマを勉強するときなどに活用できる、検索×AIを使った学習法を紹介します。
概要をつかむ
AIは検索結果から得た断片的な情報を整理し、ポイントを絞って教えてくれます。また、内容が難しい場合でも易しい表現に直してくれるので、知らないテーマでも全体像の把握がしやすくなります。
まずは学びたいトピックについて、検索エンジンで入門記事や解説動画を探します。それらの目次や概略をもとに、生成AIに「○○とは何かを初心者向けにわかりやすく説明してください」「○○の重要ポイントを3つ教えてください」と質問してみましょう。専門用語が多い場合は「中学生でもわかるように教えて」なども指示するとよいでしょう。
疑問点の解消
学習を進めていくと、理解が難しい部分や疑問点が出てきます。その際、まずはそのキーワードを検索してみて他の説明を読んでみましょう。それでも分からない場合は、生成AIに具体的に質問してみます。この際も「中学生でもわかるように教えて」のように指示するとよいでしょう。
また、検索で見つけた説明文をAIに投入し「この部分を噛み砕いて説明してください」と頼むのも有効です。難解な専門記事をAIが優しく言い換えてくれるため、自分の言葉で理解し直す助けになります。
知識の定着を図る
学習が進んである程度内容を理解できてきたら、AIを使って知識の定着を図ることも可能です。例えば「○○について重要な質問を5つ出して」とAIに依頼し、自分で解答を考えてみます。答えに自信が持てないところは再度検索して確認し、AIにも答え合わせをしてもらいましょう。このようにアウトプットをAIにサポートしてもらいながら、検索を使って知識を確認したり深めたりすることにより、効率的な知識の定着が期待できます。
複雑なリサーチを成功させるためのステップ別アプローチ
仕事で専門的なレポート作成や市場調査など大掛かりな調べものを任されたとき、何から手を付ければ良いか戸惑うこともあるでしょう。そんなときこそ、検索とAIの力を借りて計画的に進めることが成功への近道です。検索とAIを駆使して複雑なリサーチ課題を乗り越えるためのステップ別アプローチを紹介します。
ステップ1:調査前
まずはリサーチの最終目的を明確にします。何を解明・報告したいのか、そのためにどんな情報が必要かを書き出してみましょう。もし課題が漠然としている場合は、生成AIに相談してみるのも手です。「○○について調べるにはどんな観点がありますか?」と尋ねれば、AIが関連しそうなトピックや切り口を提案してくれます。それらをヒントに、自分なりに調査項目をリストアップします。
ステップ2:情報収集
項目が決まったら、それら一つひとつを検索エンジンを使って深掘りしていきます。ここでも検索演算子や高度な検索テクニックが役立つので、ぜひ使ってみましょう。収集する中で情報量が多くなってきたら、適宜AIに要約させておくと後で分析しやすくなります。
ステップ3:情報整理・分析
情報収集が一通り終わったら、集めた知見を統合して全体像を掴み、情報の整理や分析を行います。その際、AIから「△△に関する情報が不足しているようです」といった指摘を受ける場合もあります。そこが更なる調査のヒントになるので、その指摘をもとに再度検索で追加情報を集め、リサーチ結果に厚みを持たせましょう。
■プロンプト例
「これらの情報のまとめて要点を箇条書きにしてください」
「これらを踏まえて○○について全体像をまとめてください」
ステップ4:ファクトチェックと裏付け強化
調査内容がまとまってきたら、重要なデータや結論には必ず裏付けとなる出典を用意しましょう。AIがまとめた文章中の各事実について、出典を確認します。検索エンジンで類似の調査事例や統計資料を探し、信頼性の高い情報源を引用し、根拠を補強していきましょう。
【実践ガイド】検索とAIを使い分けるための判断基準
仕事で情報を調べたり資料を作成したりするとき、検索エンジンとChatGPTのような生成AIツールのどちらを使うべきか迷う場面はありませんか?どちらも便利ですが、それぞれ得意なことと不得意なことがあります。その使い分けの判断基準をポイント別に紹介します。
■知らない情報or既に知っている情報
知らない情報…検索
全く知らない内容を調べるときは、まず検索エンジンで基本的な定義や公式情報を確認するのがおすすめです。公式サイトや専門記事などの信頼できる情報源に当たることで、誤情報を避けやすくなります。また、知識がない分野だと生成AIの回答が正確か判断しづらく、誤った情報が混じるリスクもあります。
既に知っている情報…AI
既に基本を知っている話題については、生成AIに質問して詳細や新たな視点を得る方法が有効です。ChatGPTのようなツールは、知っている内容を前提にすると会話形式で疑問を解消し、関連情報を整理して提示してくれるため、自分の知識を補完するのにも役立ちます。
■ある時点での情報or網羅的な情報
現時点の最新の動向やニュースを調べたい…検索
最新のニュースや特定時点のデータを知りたいときは、検索エンジンで確認するのが適しています。検索エンジンであれば、ニュースサイトや公式発表などの日時が明示された信頼性の高い情報を取得することが可能です。生成AIは最新動向を反映できない場合があるため、時点が重要な情報は、検索エンジンで調べたほうが安心です。
網羅的な知識や全体像を把握したい…AI
過去の情報も含めて広範囲にわたるトピックについて概要をつかみたいときは、生成AIによる要約を使えば短時間で包括的な回答が得られます。ただし、AIの回答だけで不安な場合は、検索エンジンで追加の情報収集を行い補完しましょう。
■詳細or概要
正確・詳細な数字やエビデンスを知りたい…検索
法律の条文や統計データなど正確さが求められる情報は、検索エンジンで原典を確認することで把握することができます。生成AIは細部に誤りが混じることもあるため、重要な数値や専門的な内容は検索で一次情報を参照しましょう。
大まかな概要だけ知りたい…AI
専門用語・技術概念を理解したい、長い文章のポイントを掴みたいといった場合は、まず生成AIに概要を尋ねてみるのがよいでしょう。生成AIは難しい内容も平易な言葉で噛み砕いて説明できるため、理解のハードルを下げてくれます。対話形式で追加の質問もできるので、疑問を気軽に解消しながら学習を進められます。
まとめ
検索エンジンと生成AIは、それぞれ違った強みを持つ頼もしいツールです。検索とAIは競合するものではなく補完し合う関係です。検索で得た知見とAIのサポートを合わせれば、情報収集から資料作成まで強力な助っ人が常に二人いるようなもの。ぜひ両方の良いとこ取りで、仕事の生産性アップにつなげてください。ぜひ本記事で紹介した判断基準を参考に、場面に応じて両者を使いこなしてみてください。