スイーツやグルメの食べ歩き、アイドルオタクの日常などをYouTubeに動画として配信する「Vlog(ブイログ)」。興味のあるVlogでコメント欄を開放していれば、コメントを残すことで同じ価値観を持つ人と交流できる他、情報源としても利用できるといったメリットが挙げられます。
スポーツ観戦におけるVlogは、Vlog配信者の日常の風景に加えて、応援するチームや選手の想い・魅力の発信、試合観戦日の振り返りを目的として配信されています。今回は、役者活動を目指すかたわら、サッカーチームの試合観戦の記録を中心にVlogで配信している、松村ゆきさんにお話を伺いました。
初恋の男の子と父親に導かれて~サッカーとの出会い~
サッカーに出会ったきっかけは、初恋の男の子でした。彼はサッカーをしていて、彼と少しでも仲良くなりたくて、話題作りのつもりで日本代表の試合を観ているうちに、すっかり魅了されてしまいました。なかでもプレーの上手い柿谷 曜一朗(かきたに よういちろう)選手に惹かれてしまって、所属してるクラブチームを調べたら、セレッソ大阪(以下、セレッソ)にたどり着いたんです。
数年後父にキンチョウスタジアム(現ヨドコウ桜スタジアム)に連れて行ってもらいました。 実はそれよりも前に父に万博記念公園にガンバ大阪の試合に連れて行ってもらったのですが柿谷選手がセレッソにいたこともありガンバ大阪にはイマイチピンとこなくって。セレッソ大阪を知ったきっかけは紛れもなく柿谷選手のおかげですが、気づけば 「柿谷選手を観たい」というよりも「セレッソ大阪が好きだ・クラブを応援したい」 に変わっていました。チームを離れた柿谷選手のことが今でも一番好きなサッカー選手であることに変わりはないのですが、この先もずっと私はセレッソ大阪というクラブを応援したいです。
今のサッカー好きの自分があるのは、初恋の男の子と父のおかげですね。
ちなみに今シーズン、セレッソの中で特に推してるのは舩木 翔(ふなき かける)っていう選手です。アカデミー育ちの選手で、2019年にジュビロ磐田に期限付きで移籍した後J3の(SC)相模原でプレーしてたんですけど、今年セレッソに帰ってきてくれて。2019年のルヴァンカップで、名古屋(グランパスエイト)との試合をアウェイ観戦したとき、ゴールを決めた舩木選手を見て「応援したいな」と思ったのがきっかけです。
舩木選手は自分が全く出てない試合でも、味方の選手がいいプレーをしたり、点を取ったりすると、ベンチにいる誰よりも喜んでるんですよね。自分だったら同じチームの選手がどんなにいいプレーをしても悔しいし、味方のプレーを素直に喜べる舩木選手が素敵だなと。今年から、「へディンガー舩木」っていう横断幕を作って応援してます。
サポーター活動を通して、自分と向き合う
できるだけ試合を観に行き、VlogをYouTubeにアップするのが、今のサポーター活動のメインになっています。
普段は女優を目指してオーディションを受けつつ稽古をしたり、バイトしたりして過ごしているんですが、並行して試合観戦とVlogアップ……って本当に大変で。だいたい10分〜15分くらいのVlogを作ってるんですけど、15分の動画を編集するのに20時間くらいかかってるんですね。それだけの時間があれば映画も観れて、小説も読めるし、これからお世話になる予定の事務所の方からも「今のスタイルだと、サッカーが好きな女の子で終わっちゃうよ」って言われてしまったので、「お芝居がしたい」っていう原点に返って自分の生活におけるサッカーの割合を見直しています。
役者としてはドラマや映画に出るのが目標です。特にVlogを観てくださっている、7~8割いるであろう全国のセレッソサポーターの皆さんに観に来てもらえるような、あと父にもかなり支えてもらってるので、父に映画館に足を運んでもらえるような作品に出ること、ゆくゆくはキックインセレモニーに女優・松村ゆきとしてゲストに呼ばれることが理想で、将来の夢です。
諦めなければ、必ず届く〜ゴール裏での応援〜
高校生のとき、初めて1人でスタジアムに行きました。お金がないけどどうしても試合を観たくてチケットの安いシートを探したところ、ゴール裏の席が安いことに気づいて行ってみたんです。そこで、旗を振ったり大声で叫んだり、手を叩いたりしながら応援してる人たちがすごくカッコよかったし、初めてゴール裏に来たのに温かく受け入れてもらえた気がして、居心地のよさを感じました。以来、ホームでもアウェイでもずっとゴール裏で応援してます。
セレッソのゴール裏のよさは、初めて応援に来た人でも入りやすい空気感があるし、チャント(応援歌)も簡単なところです。あと、ゴール裏からの応援が確実に選手に届くんだなって実感したことがあって。今シーズンのルヴァンカップ準々決勝のセカンドレグ(第2戦)の川崎戦で、後半戦のラスト10分まで0-2でセレッソが負けてたんです。でもコールリーダー(応援団長に相当する人)を中心に、ゴール裏にいたサポーターたちで「諦めんな、諦めんな」って応援した結果、アディショナルタイムで点を決めてくれたことで次のステージに無事進めました。
セレッソを応援してて、距離を置きたくなったことは一度もなくて、むしろセレッソからいいエネルギーをもらっていると感じます。試合を観るときは声を出したり跳んだりして、エネルギーを思いっきり放出してるけど、返ってくる熱量も大きくて、そのままオーディションを受けるときに活かせてますね。
Vlogを始めてから、サッカーをもっとちゃんと勉強したくなりました。最初は自分が試合を観戦してる様子をただ流すだけだったんですけど、セレッソだけでなく対戦相手チームの強みとか選手をVlogでも紹介するようになってからは、対戦相手チームの試合をチェックするとか、下調べをしてから試合を観に行くことを大切にしています。もちろん前節の1試合を観ただけでは分からないところもたくさんあるけど、相手チームのことを何も知らずに、試合で起きてることをただ喋るだけでは、セレッソサポーターやチームだけでなく相手サポーターやチームにも失礼だなって思ってるので……。
セレッソのゴール裏こそ、自分が一番素直になれる場所
セレッソとは……。改めて聞かれると難しいけど、生きがいだし、自分が一番素直になれる場所でもあり、セレッソなしの人生はもう考えられません。人によっては、カラオケとか飲みに行ってストレスを発散すると思うんですけど、私の場合セレッソの応援に行くことであり、「週末セレッソの試合があるから今週頑張ろう」っていうモチベーションにも繋がってるんですね。
セレッソがボロ負けした日は、次の日も結構引きずります。先日(2022年9月7日開催)の天皇杯の広島戦は1-2で負けたんですけど、実は後半ラスト10分までセレッソが勝ってたんですよね。でもラスト10分で逆転されてしまって。「セレッソ、3冠いけるんじゃね?」っていうときもあったのでひどく落ち込んで、試合終了後セレッソサポーターになって初めて拍手できなかったんですよ。
その日、父に泣きながら電話したんですけど、ガンバサポの父からは「嫌味か?応援してるクラブなんやったらどんなときでも応援せなあかんのちゃうか」って怒られてしまって。次の日も引き続き落ち込んでたけど、美味しい晩ご飯を食べたのと、「まだリーグ戦がある」と気づいて、気持ちを取り戻せました。
サッカーの試合を応援しているときは、うれしいとか楽しいという感情や、悲しいとか悔しいという感情を、感じたままに全身で表現しています。そういうときは120%嘘ついてないし、そんな自分が嫌いじゃない。また嘘をついて表現すると嘘になってしまうので、Vlogでは喜怒哀楽を表現する自分のありのままの姿を見せていきたいですし、これからもそんな感じでVlogを作っていこうと思っています。