現在、サッカーJリーグファンは788万人(※)いると言われていますが、ここ数年でやや右肩下がりで推移しています。また、コロナ以前の水準にはまだ遠いものの、スタジアムでの声出し応援や観戦者数の制限を緩和しだしたことも影響し、2022年のスタジアム観戦者数はコロナ禍に突入した2020年・2021年と比較して増加傾向にあります。
今回は会社員として仕事をしている傍ら、TwitterやYouTubeでサッカー観戦の面白さや魅力を発信している塩谷祥加(しおやひろか)さんにお話を伺いました。
ひろかのスポーツログ
(※)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社と株式会社マクロミルが実施した「2022年スポーツマーケティング基礎調査(https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2022/10/news_release_221027_01.pdf)」より
浦和レッズファンになったきっかけ
実は、そもそも運動はあまり好きじゃなかったし、スポーツ観戦もそんなに興味がなかったんですが、社会人になってから不思議と運動欲が湧いてきて、スポーツを観るのも割と好きになったんですね。
入社と同時に先輩に誘われて、自社のサッカークラブのマネージャーを務めることになりました。当時サッカーに関しては全く知らなかったので、試合で記録をつけるために勉強をしたものの、正直サッカーを観ててもあんまり面白くないうえ長いし飽きるなぁと思ってました。なので、メンバーのみんなが飲み会でサッカーやJリーグの話をしてても全くついていけず……。
でもいつかはサッカーにも詳しくなりたいという想いを抱いていたところ、2021年末に天皇杯の決勝を観に行く機会がありました。独特のビジュアル、国立の階段や廊下にばらまかれた、「浦和をアジアへ!」みたいな文章が書かれているA4の紙の数々……。こういうのに接していくうちに、「浦和レッズ=サポーターがとにかく熱いチーム」っていうのが強く印象に残りました。
それと、今年の8月末のACL(アジアチャンピオンズリーグ)の試合をスタジアムで観戦してものすごく感動して、今ではすっかり浦和レッズのファンになりました。埼スタ(=埼玉スタジアム2002)が自宅から近いので、頻繁に通えることも好きになった理由の一つかもしれません。
それとめちゃくちゃややこしいんですけど、そもそもサッカー好きになったのはガンバ大阪ビジネスアカデミー(GBA)の受講も大きく影響しています。スポーツビジネスを学びたくて半年くらいかけて受講しましたが、スポーツビジネス全般と言いつつも、カリキュラムのゴールがサッカーで集客するための企画を考えて実施するところまでだったので、観客の気持ちを理解したくていろんなチームの試合を観に行くうちにどんどんのめり込んでいきました。
初心者向けサッカー観戦の楽しみ方を発信
サポーター活動として取り組んでいるのは、主に2つです。
サッカー観戦は月に5~8回行ってますね。基本的には、ホーム・アウェイ問わずなるべく現地まで行って観戦しています。スタジアム観戦の良さを1回味わってしまうと、試合の動画配信を観るだけでは物足りなくて。それと見逃しちゃいけない、これは現地に行かないと絶対後悔するっていう強迫観念みたいなのもあり、好きになったものはとことん突き詰めたいっていう性格も手伝って、可能な限り現地で応援するようにしています。
あとはVlogの配信です。最初サッカーの試合を観たいなと思ったとき、何時間前に行けばいいのかとかグッズはどこで買うべきなのかとか分からなかったし、スタグル(スタジアムグルメ:スポーツ観戦中に楽しめるグルメ)がネットで検索してもなかなか出てこないチームもあって。こういうのって、初めてスタジアムでサッカー観戦したい人にとってはハードルになるんじゃないかと感じました。
サッカーファン初心者からコアファンになっていく過程のなかで、1人でも多くの人にサッカーの楽しさやスタジアムの雰囲気、スタグルの楽しみ方、スタジアム周辺のイベント、スタジアム観戦の楽しさを知ってもらいたい。コロナ前のピーク時と比べてスタジアムに観に来る人がだいぶ戻ってきたとはいえ、満員になったスタジアムをもっと見たい。そんな想いを一番手っ取り早くたくさんの人々に届けられるのが、Vlogでの発信だったって感じです。
個人的にはサッカー好きをもっと増やしたくて、周りの女性の友人を積極的にスタジアム観戦に誘ってます。スタジアムの外で催してるイベント、入場の時のものすごい演出とかスタジアム周りの雰囲気も含めて大きなお祭りみたいだからって。もちろんメインはサッカー観戦ですけど、少しずついろいろな制限が解除されるようになってきたし、一緒に騒ごうみたいな。それと、スタジアムで飲むビールはめちゃくちゃ美味しいよって言ってますね。サッカーを観るようになってから、めちゃくちゃビールが好きになりました。
サッカーファンである醍醐味とは
基本的には浦和レッズの箱推しですけど、浦和の選手で今推してるのは宮本優太選手と小泉佳穂(よしお)選手です。浦和レッズを応援すると決めたとき、「この選手のこういうプレーがすごい」っていうほどサッカーのことはよく分からず……。とりあえず選手一覧で見て惹かれたのが宮本選手と小泉選手だったんですが、ふたりのYouTubeやInstagramを見ていて、試合以外での姿や想いに触れているうちにいつの間にか推しになってました。
サッカーファンである醍醐味って、やっぱりこの年になっても心が大きく揺さぶられることだなと感じています。学生の時までは嬉しいとか悲しいとか思いっきり心が動かされていたことが結構あったんですけど、社会人になってからなかなかそういうのがないなって感じてて。でもサッカーを観るようになってからは、感情が激しく揺さぶられることがたくさんあって。浦和がACLの準決勝で何とか逆転してPKも勝ってっていう時は本気で心から泣きましたし、負けた時は本当に悔しくて1週間ぐらい引きずりました。こういうところがサッカーファンの醍醐味であり、サッカーにのめり込むポイントかなと思いますね。
サッカーがあるからこそ生活にハリが出る
サッカー観戦に行くようになってから、効率よく仕事を進められるようになったとかなり実感しています。試合のスケジュールが分かっているから、試合中はサッカーのことだけ考えて集中するために、目の前の仕事を終わらせようと思えるようになりました。何より、仕事を頑張ろうっていうモチベーションができたことが大きかったです。
それから今リモートワークでずっと家にいるんですけど、人に会わない状況が続く中で仕事で忙しくしていると、気持ち的にだいぶ落ち込んでいた時期があって。一人でご飯食べるのも、正直めちゃくちゃ寂しかったんですね。そんな時にサッカーを好きになったおかげで、日々をかなりポジティブに過ごせるようになりました。食事中にYouTubeやDAZNで試合のプレビューであったりレビュー配信を観ているし、配信スケジュールが決まっているので、観たい試合を全てチェックしていると、1週間あっという間に過ぎていきます。
サッカーと出会えたことは人生の大きな分岐点
私にとってサッカー観戦は生きがいですね。中学生のときにアニメにハマったんですけど、それ以降はアイドルにハマったりオタ活をしたりする人たちを一歩引いて見てたんです。しかし、サッカーにハマってしまった今なら、そういう人たちの気持ちがめちゃくちゃ分かります。推しのためならお財布の紐もめちゃくちゃ緩くなるし、「この資金をどうぞ使ってください」みたいな気持ちでグッズを買ってるところが正直あって。そうそう、選手のサイン入りユニフォームとタオルマフラーとマスクが一式になっている、浦和レッズの応援グッズセットが返礼品にあることを知って、さいたま市にふるさと納税をしたこともありました。ここまで自分を捧げられるサッカーは、コンテンツとして本当にすごいなって。
サッカーを観るようになってから、本当にいいことしかなくて。ここまでに話してきたことに加えて、お酒の量が減ったこともそうですし、週末がより充実したものに変わったんですよ、実際。現地ではもちろん飲みますけど、サッカーをスタジアムで観戦するだけでストレスが発散されるし満足できてしまうので、だいぶ健康的になりました。あとサッカーって、アウェイ遠征も醍醐味の一つです。週末、一人で遠征に行き、現地でいろんな人と触れ合って帰って来れるところが、よく一人で行動するけど人と絡んでないとちょっと沈んでしまいがちな自分にも合っていると感じます。
今続けてるランニングは、走るのもマラソンを完走できても、感情を誰かと共有することってなくて。だからサッカーを通して、全然知らない人とハイタッチしたり、Twitterを通してチームを好きっていうだけで共感し合えたり、いろんな人と一緒に喜怒哀楽を分かち合えたりできるのも魅力の一つだなとすごく感じました。サッカーと出会えたことは人生の大きな分岐点になったし、いろんな人にサッカー観戦の楽しさを知ってほしいと思っています。