保活とは、子どもを認可保育園や認可外保育施設に入園させるために、保護者が行うさまざまな活動を指します。
保育園入園の難しいところは、申請したからといって保育園入園がすんなりと決まるわけではない点にあります。家庭状況を点数化した「ポイント」のために、希望する保育園に空きが出るまでの間に預ける保育園を探したり、認可保育所だけでなく認可外保育施設、保育ママや小規模保育園にも見学に行ったりと、保活は保育園入園を考えている親御さんたちにとってはとても労力を必要とする活動です。
本記事では、保活に関する基礎知識を解説します。
保活とは?
保育施設は、働いていたり妊娠中だったり、病気療養中だったりといった理由でお子さんを日中家庭で保育できない事情がある家庭に対して、保護者に代わって毎日一定時間お子さんを保育することを目的としています。
保活とは、そうした施設に預けるために、働く場所の確保から保育園の見学、申請書類の準備などを行うことを指します。
認可保育所(認可保育園)の入園には、保育園入園可否を役所が判断するための材料として、日中保育ができないと認められる家庭状況を要件として細かく定められています。例えば父母が8時間以上働いている、父母どちらかの親または親族の介護をしている、養育してくれる祖父母や親族が同居していないといったことです。これらの理由を記載した申請書類を、就労証明書などの客観的証明と合わせて提出します。
園の種類
各自治体の認可を得て設置されている子どもの保育の場として、次の施設が挙げられます。
認可保育園(認可保育所
都道府県または各自治体が認可し、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」をはじめ、国や自治体が定めている職員の配置基準(0歳児3人につき保育士1人など)や設備、面積を満たした施設です。厚生労働省所管の児童福祉施設で、「保育所保育指針」に基づき、子どもの発達に応じた保育を提供しています。保育時間は原則8時間ですが、早朝保育や延長保育を実施しているところ、土曜日にも保育を実施しているところもあります。
認可外(無認可)保育園
認可外(無認可)保育園は、都道府県知事に申請して設立された民間運営の施設です。認可保育園に比べて保育料が高い分、英語教育や体操など独自のカリキュラムがあったり、24時間保育や夜間保育など保育時間を長く設定しているところがあったりと、園ごとに強く個性が現れるのが特徴です。
東京都認証保育所
都が設けた独自の基準をクリアした保育所に対して、東京都が認証する施設です。認可保育所では空きがなく、産休明けからすぐにでも働きたいので預かってほしい、労働時間が長いので通常の保育時間だとお迎えまたは預けに行くのが難しいといった、延長保育や認可保育所の増設だけでは対応しきれない、東京ならではの保育ニーズに応えることを目的としています。認証保育所にはA型とB型の2種類があり、概要はそれぞれ以下の表の通りです。
認証保育所の概要
区分 | A型 | B型 |
設置主体 | 民間事業者 | 主に民間事業者・個人 |
対象児童 | 0~5歳 | 0~2歳 |
規模 | 20~120名 | 6~29名 |
開所時間 | 13時間 | |
保育料 | 自由設定(ただし上限あり) ※保育料負担軽減の制度があり、課税状況や保育の必要性などで軽減上限額が変動 |
預かる理由は問わないとしています。利用される方は働いている方がほとんどですが、「幼稚園入園までに集団生活に馴染ませたい」などの理由から預ける方もいらっしゃるようです。
認定こども園
認定こども園は、2015年から施行されている「子ども・子育て支援法」により誕生した保育機関です。3歳以上の子どもで、幼稚園の利用対象の子どもと保育園の利用対象の子どもはクラスを分けずに教育・保育を行います。また、保護者の労働時間が短くなったり長くなったりといった就労状況が変わっても、同じ園に引き続き通い続けることができますが、保育時間に通園させる場合は定員があるため自治体による選考があります。さらに、保育時間に通園させていて就労時間が短くなった場合、必ず通園中の認定こども園に申告しなければなりません。
認定こども園には、以下の4つのタイプがあります。
- 幼保連携型:幼児教育機関である幼稚園と保育園の機能や特徴を併せ持ち、地域の子育て支援も担う保育施設。幼稚園の通常の教育時間(9時~14時)に加え、午睡時間を挟んで保育を行う延長保育や土曜保育、一時保育も実施している
- 幼稚園型:保育が必要な子どものために保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備えている認可幼稚園
- 保育所型:保育が必要な子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えている認可保育所
- 地方裁量型:認定こども園として機能できるだけの設備が整っていて職員数も揃っている、地域の無認可教育・保育施設
小規模保育施設と家庭的保育(保育ママ)は、「子ども・子育て支援新制度」において、「地域型保育」として創設された事業です。
小規模保育施設
小規模保育施設は、国及び各自治体の基準を満たした保育施設です。0歳から2歳児が対象で、家庭保育に近い雰囲気のもと、定員6名から19名までの規模の小さい保育施設ならではの特性を活かした、きめ細かい保育ができることが特徴です。
家庭的保育(保育ママ)
家庭的保育(保育ママ)は、主に0歳から2歳までの乳幼児を保育者の自宅などで預かり、保育を行う事業です。3人~5人の少人数保育が特徴で、原則として1日8時間としていますが、自治体によって異なります。また、保育料に加えて紙おむつ代やミルク代といった雑費がかかったり、お弁当が必要だったりすることがあります。なお、家庭的保育(保育ママ)でも一時預かりを実施しているところがあるので、利用の際は電話で確認しましょう。
上記以外に、企業が社内の保育施設で実施している事業所内保育、お子さんに疾患などがあり、個別でケアが必要な場合に保護者の自宅を訪問して保育を行う居宅型保育などがあります。
預かり保育・延長保育・一時預かりの違い
預かり保育
預かり保育とは、幼稚園や認定こども園が通常の保育時間(9時~14時)以外に行う保育で、園に在籍するお子さんはもちろん、一時的な利用でも可能です。幼稚園や認定こども園によっては、土曜日や夏・冬・春の長期休みの期間でも預かり保育を実施しているところもあります。また、園によって実施時間や料金が異なり、利用条件に保護者の就労を必須としていたり、在籍児のみ対象としていたりするため、預かり保育を検討している場合は幼稚園または認定こども園への確認が必要です。
ちなみに、令和元年からの「幼児教育・保育無償化」の施行により、自治体によっては預かり保育も保育料が無償の対象になったり、助成制度が設けられていたりします。
延長保育
延長保育とは、認可保育所(認可保育園)や認定こども園(幼保連携型)が通常の保育時間を延長して保育を実施する事業で、18時や19時といった夕方以降の時間を延長保育時間として設定しています。長時間の保育になるのでおやつや夕食の提供があったり、入浴や睡眠の時間があったりします。預かり保育同様、延長保育の実施状況は保育園や認定こども園(幼保連携型)によって異なるので、延長保育を考えている場合は通常の保育と合わせて利用できるかどうかも、検討材料に含めるとよいでしょう。
一時預かり
一時預かりは、買い物や通院、求職活動、役所に出向く用事があるなど、保護者が一時的に子どもを預けたいときに、理由を問わず時間単位で利用できる制度です。一時預かり利用時に就学前であること、なおかつどの施設にも通園していないことが条件です。自治体によっては、一時保育の利用登録を求めるところもあります。一時預かりを実施していない保育園、預かり可能となっていても園の行事などで実施できないこともあるので、利用したいときは予め保育園へ問い合わせましょう。
保育にかかる費用(保育料)
認可保育所の保育料は、国の定める「利用者負担(保育料)の水準」をベースに、次の要素も考慮して決定します。
居住している自治体(市区町村)
子どもを預ける保育園は、住んでいる自治体にある保育園から選ぶのが原則です。国からの補助金と、程度によって細かく分けられている(ここが自治体ごとに異なる)階層、保育を必要とする事情によって保育料が変わります。
世帯の所得
保育料は、各家庭の区民税の所得割額(住宅取得控除等の税額控除適用前)などによっても決定します。非課税世帯で父母の収入が生活保護の支給基準を下回っていれば、同居している親族の有無と、同居している親族がいれば各自治体の税金の所得割額などにより決定します。転入者で転入後に住んでいる自治体に課税情報がないときは、住民税課税(非課税)証明書等の提出が必要です。
子どもの年齢
お子さんの年齢と保育の必要性の有無によって利用できる施設が異なるため、保育園入園の申請書類をもとに、自治体ではお子さんを以下の支給認定のいずれかに区分します。この区分は、保育料を決定するときの基準になってきます。
支給認定の種類 | 対象年齢 | 教育・保育の必要性 | 利用施設 |
1号認定 | 満3歳児以上 | 教育を希望する場合 | 幼稚園、認定こども園(幼稚園型) |
2号認定 | 満3歳児以上 | 「保育を必要とする事由」に該当し、保育所等での保育を希望する場合 | 保育所、認定こども園(保育所型、幼保連携型、地域裁量型) |
3号認定 | 満3歳児未満 | 「保育を必要とする事由」に該当し、保育所等での保育を希望する場合 | 保育所、認定こども園(保育所型、幼保連携型、地域裁量型)、小規模保育施設、家庭的保育(保育ママ) |
保育時間
保育時間は保育を必要とする理由に応じて、短時間、標準時間のいずれかになります(必要量区分)。この保育時間の長さも、保育料を決める要素になります。保育を必要とする理由(認定事由)と必要量区分は、以下の表の通りです。
認定事由 | 必要量区分 |
就労(週3日以上1日4時間以上の就労が対象) | 実情に応じ決定 |
介護、看護 | |
就学 | |
求職活動 | 短時間 |
疾病、障がい | |
育児休業 | |
妊娠、出産 | 標準時間 |
災害復旧 | |
その他 |
保育所等を利用できる人は?
保育園を利用したい場合、「保育施設での保育に相当する理由があること」を、入園の選考機関である自治体に証明しなければなりません。保育所利用の申請には、さまざまな条件があります。以下の条件に該当すれば、保育施設への利用を検討してみてもよいかもしれません。
- お子さまの年齢が満0歳から5歳のいずれかであること(0歳の場合、生後59日が経過していること)
- 月64時間以上就労をしている場合(自治体ごとにバラつきがある)
- 病気や怪我をしている、何らかの疾患を心身に抱えている場合
- 親または親族(2親等)の介護や看護をしている場合
- 災害復旧(震災、風水害、火災など)にあたっている場合
- 求職活動(起業準備を含む)を継続して行っている場合(保育所等の利用承諾日から起算して90日目が属する月の末日までに就労証明書と変更届の提出が必要)
- 職業訓練含め、就学をしている場合(在籍証明書が必要)
- 出産の前後である場合(出産前2か月から(多胎妊娠の場合は出産月の前4か月から)出産後56日目が属する月の末日まで)
- 育児休業取得中に、既に保育を利用している子どもがいて継続利用が必要であると認められること
- 児童虐待やDVのおそれがあること
- その他、保育施設での保育が必要と自治体が認めるケース
申し込みから入所の流れ
来年(2025年)4月に入園を目指すとき、認可保育所への申請を今年の秋ごろに行えば、2025年2月に入園の可否が決定します。
ここでは、認可保育所(認可保育園)への入所(入園)申し込みから内定までの流れを簡単にご説明します。
- 保育園のリストから、候補をいくつかピックアップし、施設見学に行きます。その中から、保育者との面談や園児の様子、希望する保育所にお子さんを通わせている知人がいれば話を聞くなどして候補を絞っていきます。
- 保育所入園を受け付けている、自治体の担当課に出向いたり、電話したりして申込み書類一式を取り寄せましょう。最近はオンラインからでも申し込みを受け付けている自治体も増えてきました。
- 申請書類に記入します。家庭の状況次第では就労証明書などの添付書類を求められることがあり、申請期限までに取り寄せておきましょう。
- 申請書類と添付書類を、保育所入園を受け付けている担当課宛に送付します。
- 自治体は教育・保育給付認定、利用調整を行い、入園可否の決定を下します。
- 入園決定後、保育所の先生とお子さんとで面接を行い、入園に向けた準備を進めます。このとき、入園までに家庭で行ってほしいこと、持ち物などについての説明もあります。
- 通園開始
選考の結果、希望の園に入園できなかった場合や入園自体を保留となったなどの場合は、二次募集や預かり先を探します。
休職中や育児休業中に保活はできるのか?
ケガなどで入院したり、入院をしていなくても病気療養をしていたりして休職中であっても、育児休業(育休)中であっても保活は可能です。その場合、休職中であることを申請理由に書きましょう。休職と一字違いの求職中でも同様です。直前までの就労状況などで入園可否が決定します。
下のお子さんの育児休業中で上のお子さんが既に通園していても、ひとり親家庭であったり生計中心者が失業したりするなどの理由があれば、継続して保育が優先的に認められやすくなっています。ただし、「育児休業中=母親が家庭にいる」として、自治体によっては入所(入園)が認められなかったり、途中で上のお子さんの退園を余儀なくされたりするケースがあるようです。求職活動中の場合も、「仕事が決まっていない=日中に保育できる保護者がいる」として、なかなか認められないこともあります。