これから出産を控える女性社員のために、日本ではさまざまな制度を設けています。その中の一つが産前・産後休業、いわゆる産休と呼ばれるものです。

本記事では、産休について解説いたします。

産休とは?

産休とは、法律に基づいて全ての女性の労働者が取得できる出産前後の休業です。法律では、「6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならず、また、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない」(労働基準法第65条)と定められています。社内規定がなくても、正社員だけでなく契約社員やパート社員、派遣社員などの方も会社へ申請できます。

ただし、フリーランスや個人事業主、日雇い労働者は産休の対象外です。

産休の取得期間と休暇中の手当

産休は産前休業と産後休業に分けられ、それぞれで取得期間が異なります。産前休業は出産準備のための休業で、出産予定日から逆算して6週間(多胎妊娠は14週間)から、産後休業は出産後体を休めるために必要な休業で、出産後8週間です。ただし、医師が認めれば産後6週間から働くことも可能です。

また、産前・産後休業期間中は、以下の一時金が支給されます。

出産育児一時金

出産育児一時金は、健康保険の被保険者またはその被扶養者である家族が妊娠4か月(85日)以上で出産した場合、保険が適用されない出産費用をカバーするために受け取れるお金です。

2022年12月に政府は令和5年度での出産育児一時金の引き上げを公表しているため、受け取れる出産育児一時金の額は次のようになっています。

  • 2023年3月31日までに出産した場合:42万円(在胎週数が22週に達していない、産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した際は408,000円)
  • 2023年4月1日以降に出産した場合:50万円(在胎週数が22週に達していない、産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した際は488,000円)

実際に病院に支払った費用が42万円(2023年3月31日まで)未満または50万円未満(2023年4月1日以降)であれば、残りの費用分が支給されます。以下の3種類から支給方法を選択可能です。

直接支払制度出産にかかった費用を、出産育児一時金を上限として健康保険組合から病院に支払う制度です。医療機関の大半で導入されており、退院手続きの際にまとまった金額を用意する必要がなく、出産育児一時金の額を超過した分のみ支払うのが特徴です。
出産した医療機関の窓口で保険証を提示し、出産育児一時金の申請・受取に係る代理契約を締結してください。
※退職後6か月以内に出産したケースで、退職前の勤務先で健康保険に入っていれば、「資格喪失等を証明する書類」の交付を受けます。その書類も併せて提示してください。
受取代理制度出産育児一時金の受け取りを出産予定の病院に委任する制度で、出産予定の病院が扱っている場合のみ利用できます。出産を控えた方が出産予定の病院で申請書を作成した後、出産予定日の前日から逆算して2か月以内に、お住まいの自治体に申請を行います。健康保険から出産予定の病院へ出産育児一時金を直接支給するため、出産費用のうち、42万円(2023年3月31日まで)または50万円(2023年4月1日以降)分の退院時のお支払いは不要です。
産後申請上記2種類の方法のいずれも利用せず、自身で出産費用を支払った後にお住まいの自治体に請求する方法。病院によってはクレジットカード払いに対応しているところもあり、クレジットカードで支払うことでポイントが得られるため、あえて産後申請を選択する人もいます。
出産育児一時金の支給申請の時効は、出産日の翌日から2年ですのでご注意ください。

出産手当金

出産手当金は、健康保険の被保険者が出産により働けない間の生活をサポートするため、加入している健康保険から支給されるお金です。ここでいう出産とは妊娠85日(4か月)以上の出産をいい、早産、死産・流産、人工中絶も含みます。出産のため会社等を休み、給料の支払いを受けなかった場合は、欠勤1日につき、健康保険から賃金の3分の2相当額が原則として支給されます。

  • 支給額:標準報酬日額×2/3×日数
  • 支給期間:出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(双児以上の場合は98日)±予定日とのずれ)+産後56日
  • 予定日より出産が遅れた場合、支給期間が延長されます。逆に予定日よりも出産が早まった場合、既に支給された出産手当金について、産後の出産手当金である56日の一部を支給したものとみなされ、早まった日数分の支給はありません。
  • 対象者:会社の健康保険、公務員等の共済組合の被保険者本人で出産で産前産後休業を取得した人

ただし、休業している間にも会社から給与が支払われ、出産手当金よりも多い額が支給されている場合、任意継続被保険者、85日未満の出産に関しては、出産手当金は支給されません。また、フリーランスや個人事業主、日雇い労働者は対象外です。

産休前の準備と注意点

妊娠が判ったときから産休に入るまでに、社内で行う準備や手続きがいくつかあります。

妊娠が分かったら出産予定日や休業の予定を早めに会社の上司に申し出ましょう。
妊娠中に会社に申し出る必要事項妊婦健診で主治医から働き方について指導を受けた場合は指導内容
妊婦健診を受けるための時間が必要な場合
引き継ぎ産休を取る前には業務の引き継ぎが発生します。後任の担当者に引き継ぐ時間をゆっくり取れない可能性などを見越して、早めに行動しましょう。後任の担当者が決まる前から徐々に担当している業務を洗い出し、引き継ぎファイル(仕事の流れや関係者の連絡先リスト、注意事項など)を作成しておき、誰が見ても分かるようにしておきましょう。
産休・育休取得にまつわるさまざまな手続きをする
  • 産前休業・育児休業の取得手続き
産後休業に続けて育児休業を取得する場合は、産前休業に入る前や産前休業中に申出を行います。休業開始予定日・終了予定日などを会社と相談の上決定し、書類にしておきましょう。
  • 出産手当金と育児休業給付金の申請
職場の健康保険担当者に確認してみましょう。
  • 国民年金保険料の産前産後期間の免除手続き
出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間(産前産後期間)、多胎妊娠の場合は出産予定日または出産日が属する月の3か月前から6か月間の国民年金保険料が免除される制度です。出産予定日の6か月前から出産後も申請可能で、住民登録をしている自治体の国民年金担当窓口で申請してください。郵送でも手続きできます。
産休に入る前は各方面にご挨拶を産休入りする日までに、同じ部署や日頃から業務上接点のある他部署の方、お取引先を中心にお世話になった人に産休の挨拶をしておきましょう。対面が可能であれば口頭で、会うことが叶わない相手であればメールを送るか電話で伝えましょう。

産休後の復帰について

産休明けに復帰するときは、会社から面談の機会を設けてもらえるので、社内規定と勤務時間帯や残業・出張の可否、復帰後の労働条件、職場環境や仕事内容の変化について会社に確認しましょう。面談の前までに、復帰後の働き方などについて、自分の考えを整理したり家族と相談して決めたりしておくとスムーズです。時短勤務や所定外労働の制限も利用できるので、検討していれば面談の際に伝えましょう。

面談の際に事業主や上司から確認されるのは、概ね以下の項目です。

  • 時短勤務の利用の有無と期間
  • 残業、出張、休日出勤は可能か?
  • 家族の協力は得られるか?
  • 保育園の送迎時間、送迎者
  • 子供が病気の際の対処方法

復帰予定日までに預かり先を確保できないなどの事情が分かれば、育児休業期間の延長も伝えます。

まとめ

産休は、会社に属して働いている人が妊娠・出産する際に取得可能な休業制度です。産前休業は子どもを迎える準備のため、産後休業は産後の女性の体を回復するために設けられています。

産休を取得できる日数や一時金などについて事前に知っておけば、安心して産休に入ることができます。これから妊娠・出産を考えている女性はもちろん、男性にもぜひ知っておいてほしい制度です。

This article is a sponsored article by
''.