「実は、読みたい本がたくさんある」「時間があったらあの本を読んでみたい」「仕事で忙しくて読書の時間が取れない」。そんな思いを持っていませんか?今は読書が習慣になっておらず、少し非日常のような時間だからこそ、ちゃんと時間を取ろうとしてなかなか読めていないのかもしれません。逆に、読書を習慣化して、スマートフォンやテレビを見るように当たり前の時間にしてしまえば、今まで読みたかった本や新しい本も読めるようになるのではないでしょうか。今回は、働きながら年間150冊を読み続けるやわつむりさんに、読書を始めたきっかけや習慣化するためのヒントを伺いました。

本に興味がなかった。読書を始めたきっかけとは

実は、大学生になるまでまともに本を読んだことがなくて、どちらかといえばスポーツの方が好きで。中学、高校は部活動に明け暮れる日々を送っていました。大学に入学後、漠然と「本くらい読んだ方がいいよな…」と思い、読書好きの兄に私でも読めそうな本を聞いてみたところおすすめされたのが、灰谷健次郎さんの『兎の眼』でした。

灰谷健次郎さんは元教師で、『兎の眼』も新米の女性教師が奮闘する物語です。まだ経験も浅く視野の狭い私でも、ある程度イメージができる世界観の本で、非常にとっつきやすかったのを覚えています。そのおかげで「本って意外と面白いな」と思えて、灰谷健次郎さんの本を一通り読み始めたのが今の原点です。

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本は「人生の教科書」。読み続けることの魅力とは

本は、「人生の教科書」のような存在であると感じています。本を読みながら、知らない世界のイメージを膨らませて、実際に経験しているように感じることがあるんです。その中で様々な価値観に触れることができて、人の気持ちを理解する許容範囲が広がっているように思います。

最近、「多様性」という言葉を耳にする機会が増えていますが、日々の中で実際に多様性を感じることは意外と多くありません。ただ、多様性をテーマにした小説が増えているので、物語を通じて誰かの人生を追いかけながら「こういう考えもあるんだ」と知ることができるんです。何かを理解するための第一歩として、大切なことを教えてくれる存在だと思います。

また、読書を続ける中で自分自身が蓄積されていくことも魅力だと感じています。これまでに1,000冊以上は読んできましたが、今から同じくらい読もうと思っても、1年では到底無理じゃないですか。一長一短では追いつくことができない位置にたどり着いているのだと思います。

だからこそ、こうして本を読み続けていなかったら、今の私は絶対にいないと思うんです。「この本を読んだおかげでこうなった」というものはないのですが、長らく読んできたからこそ、仕事においても何にしても、今の自分があると思っています。

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忙しい中でも読書習慣を作るための4つのポイント

(1)1日のスケジュールの中で読む時間を少しでも作る

読書習慣をつけるための第一歩は、1日のスケジュールの中に読む時間を設けることだと思います。例えば「寝る20分前に読む」「夕食の後に30分読む」のように決めると良いでしょう。

また、夜に読むなら、眠くなったら寝てしまってもいいと思います。読めたのが1ページだったとしても、続ければ少しずつ読み進んでいきますから。そうして1冊読み終える経験をすることで、さらに習慣化されていくと思います。

(2)読むための環境に身を置く

私が読書を続ける中で大切にしているのが、読書のための雰囲気作りです。家に読書机が2つあり、本棚の前にも椅子を置いて読むことができるので、そうした環境に身を置くことで読書のスイッチが入るような雰囲気作りを大切にしています。

ただ、すぐにそういう環境は作れないと思いますし、テレビにスマートフォンに、家には誘惑が多いですよね。勉強もそうですが、家で集中して何かをするのが難しい方も多いと思います。

そんな方におすすめなのが、カフェなど家以外の環境で本を読むことです。仕事帰りにカフェに寄って30分読書してから帰る、というのも良いと思います。カフェで本を読むと「ちょっといいことしたな」と気分も良くなって、モチベーションも上がります。私は家の外で読書をするのも好きなので、朝にマクドナルドへ行ったり、仕事帰りにカフェに寄ったりして、週に数回は外で読んでいます。

画像: (2)読むための環境に身を置く

(3)目につくところに本を置く

本が近くにある環境は大切だと感じています。というのも、私自身、本を読もうと思えたのは身近に本があったからだと思うんです。両親も兄も本を読んでいたので、本がいつも周りにあって、だからこそ「読んでみようかな」と思えたのだと感じます。

本が近くにある環境を作るためには、普段目につくところに本を置いておくのがおすすめです。ナイトテーブルに必ず1冊置いておくようにしたり、玄関に置いておいたり。ふとした時に「読もうかな」「持って出かけようかな」と思えるようにすると良いでしょう。

(4)途中でやめてもいい

面白くなかったり、少し難しかったり、自分が今求めているような本じゃなかったり。何か理由があって「違うかも」と感じたら、途中で読むのを辞めても構いません。ドラマやアニメも面白いから見続けるのであって、本も面白くなかったらなかなか手が伸びないと思うんです。1冊を読み終えるのに固執するあまり、読むのがおっくうになり、しんどくなってしまってはなかなか続きませんから、違うと感じたら次の本に行くのが良いと思います。

読み終えたい場合は、数冊を併読しながら間に少しずつ読み進めても良いと思います。小説を併読するのが難しい方は、エッセイや短編集を挟むと良いでしょう。ビジネス書やエッセイなど、途中で終わっても問題ない本もあるので、私自身も併読する中で読み終わらない本があります。

読書をしたい女性におすすめの本

青山美智子『お探し物は図書室まで』

お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?
人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。「本を探している」と申し出ると「レファレンスは司書さんにどうぞ」と案内してくれます。
狭いレファレンスカウンターの中に体を埋めこみ、ちまちまと毛糸に針を刺して何かを作っている司書さん。本の相談をすると司書さんはレファレンスを始めます。不愛想なのにどうしてだか聞き上手で、相談者は誰にも言えなかった本音や願望を司書さんに話してしまいます。
話を聞いた司書さんは、一風変わった選書をしてくれます。図鑑、絵本、詩集......。
そして選書が終わると、カウンターの下にたくさんある引き出しの中から、小さな毛糸玉のようなものをひとつだけ取り出します。本のリストを印刷した紙と一緒に渡されたのは、羊毛フェルト。「これはなんですか」と相談者が訊ねると、司書さんはぶっきらぼうに答えます。 「本の付録」と――。
自分が本当に「探している物」に気がつき、
明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。

この話には、悩みを抱えるいろいろな世代の方が登場します。ですから、どの世代の方が読んでも、どこか自分に当てはまるところがあるのではないかと思います。また、あっという間に読めてとっつきやすいのもおすすめポイントです。活力が湧いてくるような話で、沢山ある青山さんの作品中でも一番好きな話です。

辻村美月「この夏の星を見る」

亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で大人たち以上に複雑な思いを抱える中高生たち。しかしコロナ禍ならではの出会いもあった。リモート会議を駆使して、全国で繋がっていく天文部の生徒たち。スターキャッチコンテストの次に彼らが狙うのは――。
哀しさ、優しさ、あたたかさ。人間の感情のすべてがここにある。

コロナ禍で「失われた時」でなく「こういう時だからできることもある」と、希望もあったことを伝えたくて書かれた本です。中高生や、私の子供にも読んでほしいと思える一冊です。

コロナ禍が明けた今だからこそ、気付きを得られるような1冊にもなると思います。コロナ禍のことが少しずつ薄れていく中で、「こういうこともあったな」と思い出すのも一つ。また、コロナを言い訳にしてできなかったことが、今できているのか。できるようになったのに今やってないと見つめなおすのも一つでしょう。

実は、私はコロナ禍があって動画配信を始めたんです。家の時間が増えて、読む本が増えるかと思ったら減ったんですよ。「時間があるから本を読める」と思えない自分がいて、読んでても楽しめなくなりました。この気持ちをどうしようと思い、それまで一人で楽しんでいた読書をみんなでしようと始めたんです。コロナ禍を経て大きな変化があった私自身も、いろいろと考えさせられた本でした。

阿部暁子『カフネ』

一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。
法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。

一緒に食べよう、ともに生きようと、食べることを通じてお互いの距離が縮まっていく様子を描いた本です。特に女性に刺さる内容だと思うので、おすすめの一冊です。

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