「推し」とは、オタクとして熱心に応援しているアイドルやアニメキャラクター、声優さん、俳優さんなどです。推しは人だけに留まらず、ドラマや漫画、電車、スポーツといったモノへの応援に対しても広く使われるようになりました。
推しを応援する活動を表す「推し活」に励んでいるうちに、生活や人生が驚くほど変わっていった人がほとんどです。人をそこまで変えてしまう「推し」とはどんなものなのでしょうか。
推し活応援メディア・Oshicoco(@oshikatsu_media)を運営している、株式会社Oshicocoの多田夏帆さんに、ご自身の推しの話から推しの存在までをお聞きしました。
今一番の推しは「タイの俳優さん」
推し活を応援するメディアを運営してるので、「この人を推してます」とは正直言いにくいんですけど、今一番推してるのはタイの俳優さんですね。
今は、タイの俳優さんに出会ったことをきっかけにタイドラマにハマってしまって、台湾や中国、フィリピン、マレーシア、ベトナムのドラマも観てます。
ちなみに、私が小学生の頃に少女時代やKARAなどK-POPアイドルが流行っていて、日本のアイドルよりもK-POPのアイドルのほうが身近でした。なのでタイのコンテンツに接するのにあまり抵抗感がなかったです。
ステイホーム期間中に出会った推し
そもそも、タイの俳優さんにハマったきっかけは、1年半くらい前に、あるドラマを観たことです。
2年前、コロナ禍のステイホームが推奨されてた時期に、タイドラマが世界中で話題になったんですね。そんなときに友達が勧めてくれた『2gether(トゥゲザー)』っていうBL(ボーイズラブ)ドラマを観たら、見事にハマってしまって。もう出てる俳優さんたちがホントに爽やかで、「こんなに爽やかなドラマ、今まで観たことがない!」っていうぐらい爽やかだったんですよ。
タイのドラマは、日本や韓国のドラマと比べてノリやテンション、文化が全然違うから、分かんないって感じたんです。でもその分からなさを理解したいと思ったんですよね。
タイの歴史や宗教、国の成り立ちを調べていくうちに、タイという国自体にも凄く興味を持つようになりました。同時進行で他のドラマもたくさん観て、俳優さんだけでなくタイドラマにもどっぷりハマっていきましたね。
「全然わからない」から面白い
タイドラマは日本や韓国のドラマと違って、分かんないことがいっぱいありすぎて面白いですね。タイでは、日本と違って大学生も制服を着るんですよね。
最初「高校生なのかな?」って思ったくらいだったんですが、大学生だと分かると「なんで大学生が制服着てるんだろう?」って興味を持ちました。
そこからタイの学校制度について調べると、2学期制だったり、学校が5月はじまりなので4月生まれが早生まれだったり。タイドラマにはまらなければ知らなかったであろう違いを知ることができて楽しかったです。別のドラマでも「結婚しよう」ってプロポーズしたけど、フラれる理由が「出家するから結婚はまだ無理」っていう感じで日本と全然違うんですよ。
推し活を通して40代のSNSで友達ができたり、30代・40代の方や海外の方とも話す機会が増えたり。VPNをつないで、タイのTwitterのトレンドランキングに推しの俳優さんを上げるとか、世界中にいるオタクの方々と一緒にいろいろ推し活をするのも結構楽しいですね。
タイのコンテンツはK-POPや日本のアイドルに比べると、まだ知名度も低めな発展途上のコンテンツだから、「オタクのみんなでタイの良さを広めよう」って考えてる雰囲気がタイ沼(※)にはあります。そこもすごく面白いし楽しいです。
※~沼:オタク用語。底なし沼のように、推しや推し活にどっぷりハマって抜け出せない様子。
推し活が生活のペースメーカー
推し活してるのはだいたい出勤時、退勤時です。
通勤するときは移動時間が1時間近くあるので、そこでドラマを1話観ます。2時間ぐらいで2話進むので、行きと帰りの通勤時間でコンテンツを摂取してますね。
帰宅したらすぐにいろんなことを終わらせて、コンテンツの摂取の時間を夜12時からだいたい1時間ぐらい確保してます。
タイと日本は2時間の時差があるので、推し活も結構深夜になりがちです。
ただ、「ライブ配信とかイベントがある夜に向けて日中仕事を頑張る」という感じで、1日の生活スタイルにメリハリをつけてます。土日はもうホントに推し活を全力でやってますね。
気がつけば推しを中心に回る生活が、すっかりルーティンになってしまいました。
推し活のおかげで集中力アップ
社会人として過ごしているうちに、推し活の時間が1日のルーティンとして組み入れられています。「今日はこのドラマの何話まで観る」「今日はこの俳優さんのライブ配信がある」っていうのは日々のモチベーションにもなってます。推しの予定に間に合わせるためにめちゃくちゃ集中して仕事をするから、集中力が上がっていますね。
それからこれはタイだけじゃなく他の国のドラマにも共通して、海外ドラマは、日本語字幕よりも英語字幕にしか対応してないのが結構多いです。
タイドラマにハマってからは、毎日英語に接しているせいか英語を読む力が身についていってるなと感じます。まだ仕事に活かせてるわけではないけれど、今後どこかで必ず役に立つ能力が日々培われていってる気がします。
他にも、推しの情報を仕入れたり推し友達を作ったりするだけじゃなく、ハッシュタグの付け方とか、写真の撮り方とか、いかにたくさんの人の目に触れるかを考えて発信するので、SNSの使い方もすごく上手くなりました。
推しは「人生」
私にとっての推しを一言で表すなら、人生ですね。
自分が何かを始めるとき、自分の生き方や人生に、推しの存在とか推し活って結構影響してきます。別に推し活がなくても、推しがいなくても生きていけるのかもしれないけど、それだとやっぱり人生つまらないし楽しくないと思うんですよ。
推しを応援することが日々の活力になっていて、精神的な栄養、必ず食べなきゃいけないご飯みたいなものですね、私にとって。
「何のために生きてるのか」って聞かれたら、普通に「推し活するためです」って答えるくらい、推し活は今の自分になくてはならないものです。