WordやExcel、PowerPointといったMicrosoft Officeソフトは、今や大多数の企業で使われています。将来、そうした企業で働くことを見越して、小学校や中学校、高校の授業のカリキュラムに導入されていたり、求人募集要項にも「WordやExcelが使えること」と明記されていたりと、パソコンを使えることが必須となりつつあります。
Microsoft Officeソフトに関して、スキルの習熟度を基準化したのがマイクロソフト・オフィス・スペシャリスト(MOS)です。さまざまな職業で活用できるので、事務職に就転職したい人を中心に人気がある資格です。
今回は、マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト(MOS)の基礎的な解説や難易度、受験料、学習方法などについてご紹介します。
MOSとは?
マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト(Microsoft Office Specialist、以下MOS)とは、WordやExcel、PowerPointなどのMicrosoft Office製品の操作スキルを客観的に証明できる国際的な資格です。マイクロソフト社の認定資格で、日本では株式会社オデッセイコミュニケーションズが試験を実施・運営しています。Microsoft Office製品は、Windows版とMac版がありますが、MOSの対象になっているのはWindows版のみです。
受験資格は?
受験資格は特になく、年齢や国籍に関係なく誰でも受験可能です。ただし再受験に関しては、同じ科目を2回受ける場合、前回の受験から24時間、3回目以降を受けるときは前回の受験から48時間経過しなければ受験できません。
MOSの難易度は?
MOSの試験の難易度は、他の資格と比べても高くはありません。
WordとExcelのみ存在するスペシャリスト(一般レベル)とエキスパート(上級レベル)で難易度を比較すると(※)、スペシャリスト(一般レベル)よりもエキスパート(上級レベル)のほうが高く、それぞれ合格率はスペシャリスト(一般レベル)で80%、エキスパート(上級レベル)で60%程度と言われています。
スペシャリスト(一般レベル)とエキスパート(上級レベル)の試験出題範囲は重複していないものの、スペシャリストを受験せずにエキスパートを受験可能です。ただし、エキスパートを取得してもスペシャリストのスキルを証明することにはならないので、スペシャリストとエキスパート両方を受験されることをおすすめします。
スペシャリスト(一般レベル)とエキスパート(上級レベル)に関して、公式サイトに掲載されている認定基準は以下の通りです。
試験科目 | スペシャリスト(一般レベル) | エキスパート(上級レベル) |
Word(文書作成ソフト) | 文字サイズやフォントの変更、表の作成・編集、作成した文書の印刷など、Wordでの基本的な編集機能を理解している方 | スタイル機能や目次・索引作成などの長文機能、他のアプリケーションソフトからのデータ取り込みなど、Wordでの高度な機能を理解している方 |
Excel(表計算ソフト) | 数式や基本的な関数の作成、セルの書式設定、グラフ作成など、Excelでの基本的な操作を理解している方 | ピボットテーブルなどのデータ分析、条件付き書式や入力規則の設定、マクロの作成・編集など、Excelでの高度な機能を理解している方 |
(※)Accessは2016まで一般レベルに位置付けられていたが、WordやExcelに比べて習得が難しいため、365&2019より上級レベルに変更となった。
MOSの学習方法は?
MOSの学習方法には、以下の3種類がありますが、いずれにしても、受験したい科目を決めてから、ご自分のライフスタイルや現状の理解度などに沿って、適切な学習方法を選択しましょう。
対策テキストを購入して独学
MOSの試験対策としてメジャーなのが、市販されているMOS試験対策テキストの購入です。パソコン操作に慣れている人、計画的に勉強を進められる人にはこちらがおすすめです。
テキストは出題範囲をほぼ全てカバーしているので、一読するだけでも十分学習できます。テキストの中には、CD-ROMを付属しているものもあり、実際にWordやExcelなどを操作しながら、文字だけでは分かりにくい部分を補ってくれたり、過去に出題された問題を解くことができたりと、独学者に優しいカリキュラムになっています。
例えば、WordとExcel、PowerPointの試験の対象バージョンは「365&2019」「2016」「2013」の3種類です。それぞれのバージョンで操作方法や仕様、出題形式などに違いがあるため、自分が受験する試験科目に合ったテキストを選びましょう。
YouTubeやインスタグラムを観ながら学習
YouTubeやインスタグラムには、Office製品の操作に長けているYouTuberやインスタグラマーが、これまでの業務で身につけたスキルを動画や画像などで公開しています。実践的で分かりやすく、不明な点はコメント欄で質問できたり、動画を視聴しているユーザーと交流したりできます。
スクールに通う
パソコンにあまり触れたことがない場合、スクールに通って講師から教わるのがおすすめです。
スクールには教室に通うパターンと、教室ではなく専用のブースや自宅などで対策講座の解説動画を観ながら学ぶパターンがあります。いずれも学習中に分からないところが出てきた際に講師に相談できること、教室に通うパターンであれば複数の受講生と一緒に学習しているので、モチベーション維持にもつながることなどがスクールに通うメリットとして挙げられます。
MOSの勉強時間
MOSの勉強時間は、学習者がオフィスソフトのスキルがどの程度身についているのか、「MOSの学習方法」でご紹介した方法から、どれを選ぶかなどによって大きく左右されます。スクールの場合だとカリキュラムで決められている時数通うだけでなく、自宅でも1~2時間くらいおさらいするといった方法が考えられます。
独学や動画などの視聴で学習する場合、「週に何時間学習する」「これを〇〇までに身につける」などと目標を立てて、計画的に勉強を進めることが大切です。人によっては1~3週間、3ヶ月や半年かかるケースもありますが、あくまでも一例なので、ご自分の現在のスキルや仕事の状況などを考慮して、勉強の計画を立てましょう。
MOSはどこで受けられるのか?
MOSには、全国一斉試験と随時試験の2種類の受験方法があります。試験会場は受験科目と受験方法によって一部異なるので、例えばWord 365&2019とAccess 365&2019 エキスパートを同日に受けたいとき、受験したい会場で受験希望科目の試験を実施しているか、予めチェックしてから申し込むと良いでしょう。
なお、いずれの受験方法を選択しても試験内容・合格認定証が異なることはありません。
<MOS試験概要>
試験会場 | 全国一斉試験 オンラインで申込み可能 | 随時試験 最寄りの試験会場で受験できる |
試験実施日時 | 毎月1回~2回 ※試験開始時間は受験票に記載 | 各試験会場が設定した日程 ほぼ毎日試験を開催 |
試験会場 | 全国の一斉試験実施会場より選択 | 公式サイトに掲載されている、全国約1,700の試験会場より選択 |
申込み方法 | 試験日の約1ヶ月~1ヶ月半前から申込み可能。MOS公式サイト内にあるフォームから申請 | 選択した試験会場に直接申込み |
MOSの受験料は?
MOSの受験料は試験科目に関係なく一律で、下記の表の通りになっています。ただし、一般レベルまたはエキスパートレベルで受験料が異なるのでご注意ください。同一バージョンに限り、最大3科目まで同日受験できます(365&2019の一般レベルのWordを受験する場合、同日受験できるのはExcelとPowerPointの365&2019)。
試験科目 | バージョン | |||
スペシャリスト(一般レベル) | エキスパート(上級レベル) | |||
Word (文書作成ソフト) | Word 365&2019 | 10,780円 | Word 365&2019 エキスパート | 12,980円 |
Word 2016 | Word 2016 エキスパート | |||
Word 2013 | Word 2013 エキスパート Part1 | |||
Word 2013 エキスパート Part2 | ||||
Excel (表計算ソフト) | Excel 365&2019 | Excel 365&2019 エキスパート | ||
Excel 2016 | Excel 2016 エキスパート | |||
Excel 2013 | Excel 2013 エキスパート Part1 | |||
Excel 2013 エキスパート Part2 | ||||
PowerPoint (プレゼンテーションソフト) | PowerPoint 365&2019 | ― | ― | |
PowerPoint 2016 | ||||
PowerPoint 2013 | ||||
Access (データベース管理ソフト) | ― | ― | Access 365&2019 エキスパート | 12,980円 |
Access 2016 | 10,780円 | ― | ― | |
Access 2013 | ||||
Outlook (電子メール・情報管理ソフト) | Outlook 365&2019 | ― | ― | |
Outlook 2016 | ||||
Outlook 2013 |
MOSを活かせる仕事は?
MOSは幅広い職種で役立つ資格です。パソコンを使わない企業はほとんどないので、
営業職
営業職では、業務報告書や見積書などをWordやExcelで作成します。最近では、メールソフトにOutlookを導入している企業も増えています。他に、営業職はクライアントや取引先への訪問時や会議でプレゼンを行う機会が多いため、PowerPointもよく使います。
データ入力業務
データ入力業務ではタイピングスキルが必須ですが、企業内で用いている専用の入力フォーム以外にも、データを入力するツールとしてWordやExcelを使用するケースがあります。企業や業種によっては、データ入力業務にAccessを導入しているケースもあります。
士業関係(法律事務所、社会保険労務士事務所など)
法律事務所や社会保険労務士(社労士)事務所といった士業関係の事務所では、行政機関や司法機関などに提出する書類をパソコンで作成します。士業関係の事務所の多くは、求人募集要項に「パソコンスキル」「Word、Excelが使えること」などと明記しています。そのため、士業関係の事務所に就職を考えている場合、MOSを持っておくと面接や書類審査でアピールしやすくなります。
MOSは事務職に役に立つか?
事務職は、パソコンを使用する機会の多い職種の一つです。WordやExcelはもちろん、仕事内容によってはPowerPointで資料やプレゼンテーションを作成することもあります。また、総務や経理、営業アシスタントなど、事務職にもさまざまな業種が存在し、業務内容などにより、WordやExcelで求められるスキルも異なります。求人募集要項に「MOSを持っていること」を歓迎する企業も増えてきました。
事務職は昔から人気のある職種で、1人の募集に何百人と応募が集まるケースも少なくありません。未経験で事務職に就転職を考えている場合、最低でもMOSの一般レベルもしくは同等のスキルが求められます。MOSを持っていれば、「一定のパソコンスキルがある」と判断できるため、事務職の就転職に有利に働きます。