履歴書は、求職者が転職活動でよく使う書類です。住所や学歴は簡単に埋められても、志望動機と自己PRの欄で頭を抱えてしまうという人も多いでしょう。履歴書や職務経歴書の様式はほぼ同じなので、企業の採用担当者に送られているたくさんの履歴書から採用担当者に見つけてもらえるような魅力的な書類にできるかは、応募者の腕次第ということになります。
本記事では、連日さまざまなメディアのニュースで取り上げられているChatGPTを履歴書作成に活用する方法を解説します。
履歴書や職務経歴書はなぜ必要なのか
履歴書と職務経歴書は、企業で採用情報にエントリーしたり、面接で採用担当者に手渡したりするときに必要な書類です。
履歴書には名前や住所、学歴、簡単な職歴など応募者の基本情報を、職務経歴書には職歴の詳細な内容や志望動機、自己PRなどこれまで経験してきた仕事や身につけたスキルなどをそれぞれ記載します。採用時の雇用形態次第では履歴書のみでよいとするケースもあるようですが、履歴書と職務経歴書をセットで提出することを求める企業は多いようです。
この2つは、いずれも採用する企業にとって応募者の人となりが記された貴重な資料かつ採用の可否の判断材料にもなる書類です。応募者がどんな人なのか分からないと、職種などのミスマッチが起きやすく、費用をかけて採用した人材にすぐに辞めてしまわれては、応募者・企業双方にとってデメリットしかありません。
とはいえ、履歴書と職務経歴書を作成するのは本当に手間がかかります。また、手を抜いた書類を作れば、採用担当者に見抜かれて、書類選考を通過できません。採用担当者の目に留まる書類を作成するためにも、ChatGPTの活用がオススメです。
ChatGPTとは?
ChatGPT(チャットGPT)とは、アメリカ・サンフランシスコのAI(人工知能)研究企業OpenAI社が開発し2022年11月に公開した、大規模言語モデル搭載のチャットボットです。大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)とは、Webサイトやネット記事、公開されている学術記事などの膨大なテキストデータから文字や単語の出現確率やパターンを学習するコンピュータープログラムです。ユーザーが入力したテキストからさまざまなニュアンスや文脈を理解し、ユーザーの指示に従って調べることはもちろん、文章を作成したり、要約したり、翻訳したりといったことができます。
そんなChatGPTを履歴書作成に活用するメリットは、以下の通りです。
- なかなかまとまりにくい考えや情報をまとめてもらうことで、職歴や企業研究の要約、志望動機や自己PR文の作成が簡単になる
- 自分の書いた文章を添削したり「こういう書き方もある」と提案したりしてくれる
- 誤字や脱字があれば指摘してくれる
ChatGPTを活用すれば、採用担当者の印象に残る履歴書作成が可能です。
履歴書作成に役立つプロンプト集
履歴書作成にChatGPTを活用する際は、プロンプトをしっかり作り込んでおきましょう。ChatGPTにおけるプロンプトとは、翻訳や要約、提案など、人間がChatGPTに出す指示や命令を指します。「1回で狙い通りの回答が返ってくることもそうでないこともある」と念頭に置いて、何度もプロンプトを書き直したり返ってきたプロンプトに修正を加えたりしながら、同じチャットルームでやり取りを続けていきます。そうすることで、ChatGPTはそれまでのやり取りを学んでいき、徐々に回答の精度を上げていくのです。
ここからは、履歴書作成に使えるChatGPTのプロンプトをご紹介します。会話を始める前に、「こういうルールであなた(=ChatGPT)と会話します」というルールをChatGPTに伝えます。今回は、「自己分析編」で登場した、「学生結婚をし、そのまま専業主婦をしていたが、ママ友の勧めで近所のコンビニでパートをしている40代の主婦」という設定と、前回に引き続きChatGPTの無料版(GPT3.5)を使用します。
『#会話ルール
・あなたは有能な転職コンサルタントです。転職活動に必要な履歴書と職務経歴書の作成を行う手助けをしてください。
・質問内容は次の5つの項目を聞いてください。
コミュニケーション能力や柔軟性を説明するためのプロンプト
「〇〇」
過去の職務経歴から得た知識やスキルを説明するためのプロンプト
「〇〇」
仕事をする上で大切にしているポリシーを引き出すためのプロンプト
「〇〇」
入社後に取り組んでみたいことを明確にするためのプロンプト
「〇〇」
自己PRを作成するためのプロンプト
「〇〇」
・回答が返ってきたら次の質問を投げてください。質問の進捗率が "100%" になったら、これまでの内容をまとめて分析結果を教えてください。』
各質問の「〇〇」の部分には、下記にあるプロンプトを入力します。プロンプトはChatGPTにたたき台を作ってもらったのち、文章を少し変えています。「これだったら答えやすいかも」と思えるプロンプトを選び、そのまま使ったりアレンジを加えたりして『』内の命令文を完成させ、ChatGPTに投げてみましょう。
1.コミュニケーション能力や柔軟性を説明するためのプロンプト
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2.仕事をする上で大切にしているポリシーを引き出すためのプロンプト
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3.過去の職務経歴から得た学びを質問するためのプロンプト:
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4.入社後に取り組んでみたいことを明確にするためのプロンプト:
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5.自己PRを作成するためのプロンプト:
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上のやり取りが終わったら、今度は転職コンサルタントから転職希望者へと設定を変えます。
『#会話ルール
・あなたは転職希望者です。
#前提
現在40歳。学生結婚後専業主婦をしていたため、職歴は2年ほど前から働いているコンビニでのパートのみ。主な業務内容は、商品の発注・品出し・陳列、レジ業務、宅配便の受付など。また、たまにかかってくる電話やお客様からの各種問い合わせにも対応している。さらに、PTAで広報誌の作成を担当した経験からパソコンの扱いにも慣れており、家の近くにある幼稚園の事務職(パート)への転職を考えている。
#自己分析結果
「お客様からの苦情やクレームへの対応において、問題解決に取り組む際には、お客様の話を丁寧に聞き、上司や他のスタッフと情報を共有し、解決策を提案しました。
広報活動においては、パワーポイントを使用して画像や文章を組み合わせたプレゼンテーションの作成を行いました。また、小学校のPTAでの広報誌作成を通じてパソコンスキルを向上させました。
チームメンバーや同僚との協力関係を築くためには、コミュニケーションを重視し、積極的なコミュニケーションと共有・相談の態度を持つことを心がけています。
入社後にはタスク管理のスキルとExcelのスキルを磨くことを目標とし、これによって組織全体の効率向上に貢献したいと考えています。
自己成長と学習意欲の一環として、文書作成のスキルを向上させ、事務職のスペシャリストになることを目指しています。ハローワークの勉強会やMicrosoft Office Specialistの資格取得に向けた勉強を行っています。」
上記#前提と#自己分析結果の文章をよく読んで、事務職求人への志望動機と自己PR文をそれぞれ考えてください。』
ChatGPTを用いた履歴書作成の事例
上記で作成したプロンプトで、実際にChatGPTとやり取りをしてみました。ChatGPTを用いた履歴書作成の参考になれば幸いです。
まとめ
ChatGPTは、自分の考えを整理したいときや自分が書いた文章に何らかのアドバイスがほしいときなど、あなたが志望動機や自己PRを考えるシーンでとても役に立ちます。プロンプトを作り込んだり、書き直したりすることで、あなたの求める理想的な回答を得ることができます。
ただし、ChatGPTはあくまでツールです。具体的かつ細かいアドバイスがほしいときは、プロのコンサルタントや転職エージェントを頼るのも一つの手です。ChatGPTに作ってもらった志望動機や自己PRをそのまま使うのではなく、ChatGPTから返ってきたフィードバックをもとにさらに磨きをかけて、より深みのある履歴書や職務経歴書を作成しましょう。