必要だと分かっていてもなかなか行動できていない方も多い「防災」。必要なことやできることが沢山あるために、どれから取り組んだらよいか分からない方もいるでしょう。今回は、「共働きの子育て世帯」が知っておいてほしい防災について、元消防士・元自衛官の防災アドバイザーである高岡さんにお話ししていただきました。

話を聞いた人

画像: 共働き子育て世帯の防災対策!防災のプロが教える2つの重要準備

高岡防災さん

元消防士/元自衛官の防災アドバイザー

YouTuberとしても人気で、自身のチャンネル【高岡防災】は開設1年で登録者6万人超。「防災なのに楽しい話!」をキャッチコピーに、災害現場や防災グッズのウラ話などを交えながらユーモアたっぷりに展開する防災講座が好評を博している。

異色の経歴を持っており、神戸市消防局の消防隊長、陸上自衛隊の補給部隊員、元グリコ社員(アイスクリームの商品企画)などの職歴に加えて、阪神淡路大震災で自宅が全壊した経験も持つ。防災士資格は大学時代に取得。

YouTube:https://www.youtube.com/@takaokabousai

HP:https://hazardzero.com/

もし、子どもと離れている時に災害に見舞われたら

平日の昼間、子どもが保育園にいて、自分は離れた職場で働いている時にもし災害が起きたらどうなるかを想像したことがありますか?

子どもを保育園に迎えに行けるまで、何時間かかりますか?それまでの時間、子どもは保育園でどう過ごしているのでしょうか?また、迎えに行けたとして、家に十分な備蓄はあるでしょうか。

大きな災害が発生し、スマホで連絡が取れなくなり、電車やバスでの移動ができず、水や電気は止まり、コンビニやスーパーからは食べ物や飲み物がなくなる……。沢山の困難に見舞われる中、共働きの子育て世帯にとって特に深刻な問題になるのが、「子どものお迎え」と「おむつ不足」です。

交通がストップし、自分も被災している中で子どもを迎えに行けるのか、どうやって行くのか、誰が行くのか、きちんと計画は立てていますか?また、紙おむつは大地震が発生すると、ほぼ確実にすぐ売り切れになります。そもそも店が営業を停止する可能性だってあります。家にある1~2パックのおむつでは、数日~数週のうちにうんちまみれの生活に突入することになるでしょう。今、家におむつはどれくらいありますか?

今回は、共働きの子育て世帯が直面するであろうこの2つの課題について掘り下げ、「これだけはやっておいてほしい」という対策も合わせてお話します。

子どものお迎えのための備え

災害に見舞われた際、子どもを迎えに行きたくてもすぐには行けない状態になる可能性があります。そんな場合を想定して、前もって確認し、計画を立てることが重要です。特に必要なことが、次の4点です。

・保育園/幼稚園への確認
・子どもに伝える
・夫婦、家族間での計画
・会社での備え

画像: 子どものお迎えのための備え

保育園/幼稚園への確認

迎えに行くのがもしかしたら明日以降になるかもしれない。スマホも繋がらず保育園と連絡が取れない。そんな状況では、保育園がどれくらいサービスを継続してくれて、子どもに何を食べさせてくれて、どんな対応をしてくれるのかといった事が分からず、強烈な不安に襲われます。

その不安を抱えたままでは、いてもたってもいられなくなってしまいます。まずは少しでも不安を減らせるよう、災害発生時の対応について保育園や幼稚園に確認しておきましょう。これを知っているのと知らないのとでは、メンタル面で大きな違いがあるので、後回しにせずに確認していただきたいです。

子どもに伝える

連絡が取れない中、不安を抱えているのは親である自分たちだけではありません。もしかすると、自分たち以上に子どもは大きな不安を抱えているかもしれません。

そのため、保育園/幼稚園への確認に合わせて、子どもに対しても日頃から災害があった時のことを伝えておくことも大切です。「もし地震とかが起きたら、お父さんやお母さんはすぐに迎えに行けないかもしれないけど、必ず行くから保育園のお姉さんと待っていてね」など、必ず迎えに行くことを伝えておきましょう。

夫婦・家族間での計画

大きな災害が発生した場合、バスや電車などの公共交通機関は止まってしまうので、少し離れたところへ電車で通勤しているような方はすぐにお迎えに行くことができません。そこで、誰がどうやって迎えに行くかはあらかじめ計画を立てておきましょう。

計画を立てないと、連絡が取れない中で「お父さんが迎えに向かっているのかな?それとも自分が迎えに行かないといけないのかな?」といった不安を抱えることになります。夫婦や家族の間で、誰が迎えに行くかは必ず話し合いましょう。また、おばあちゃんやおじいちゃん、友人など、自分の代わりに迎えに行ってもらえる人がいるかも合わせて確認しておくと良いでしょう。

ただ、いくら計画を立てていても、災害が起きて家族と連絡が取れなくなってしまうと、「お父さんが迎えに行くことになっているけど、そもそもお父さんは無事なんだろうか?」と考えてしまうのも事実です。誰か一人だけが迎えに行く計画ではなく、優先的に迎えに行く人は決めておきながら、連絡が取れないような時は全員が迎えに行くような計画を立てるのがおすすめです。

会社での備え

どうしようもなくなった時、歩いて迎えに行くような場合もあるでしょう。そのような状況を想定し、自力で帰ることができるように会社で備えておくことも大切です。

まずは、Googleマップなどで「どのようなルートで行くか」「歩いて何時間かかるのか」を確認します。そして、ルートやかかる時間に合わせて必要な装備を用意しましょう。

例えば、普段はヒールを履いていて、迎えに行くのに歩いて5時間かかるような場合。ヒールで長時間歩くのは厳しいので、職場にスニーカーを置いておいたり、歩いている最中に飲むための水や軽食、雨具などを用意しておく必要があります。

ちなみに東京でも交通がマヒした東日本大震災では、お店で自転車を買って自宅に帰った人もいたようです。災害発生後の状況に合わせて柔軟な発想で移動手段を考える姿勢も必要ですね。どんなものが必要になるか、あると良いかを想像し、自力で子どもをお迎えに行けるだけの装備を会社で整えておきましょう。

【質問】大地震の際に自力で迎えに行くことはリスクが高いのでは?

大地震と聞くと、映画のように至る所で火災が起こっていたり、途中で大きな余震が次々と発生して上からガラスが降ってきたり、近くの家屋が倒れてきたりして、歩くだけで危ないような状況を想像しがちです。

確かにそんな「災害パニック映画」のような状況になる可能性も絶対に無いとは言い切れません。ただ実際は、(津波が迫っているような場合を除いて)歩くだけで大ケガをしそうな道を命懸けで移動する可能性はかなり低いのです。大地震の後であっても、多くの場合はアスファルトの道を普通に歩いて移動できます。道の一部には段差ができていたり、ガレキが散乱している場所があるでしょうが、避けられる場所は避けて通れば良いのです。

ただ、東京などの大都市では人々が一斉に歩いて帰ろうとして人が密集してしまい、群衆なだれや将棋倒しに巻き込まれてしまう可能性があるため注意が必要です。そのため、3日間程度は職場にとどまるように推奨されてはいます。とはいえ保育園に子どもを置いたまま3日間も待機する事は難しいと思いますので、そこは災害の状況に応じて判断をしましょう。

おむつの備え

災害の中でも特に南海トラフ地震が発生した場合は、静岡県などの東海地方が揺れや津波で壊滅的な状況になると想定されています。実は、そこは日本の紙製品の生産工場が集中している地域なのです。

そうすると、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの紙製品の生産が止まってしまうので、多くの人が残りの在庫を求めて買いに走るでしょう。それに加えて、紙おむつもすぐに在庫がなくなることが想定されます。

実は、紙おむつは紙以外にも化学系の繊維などを原料に作られているので、トイレットペーパーなどとは少し異なります。ただ、「紙」という言葉が入っているために、買いに走る方が多く、優先的になくなる可能性があると考えられます。

また、もし紙オムツの生産工場が無事だったとしても、大災害時は国内の物流が止まってしまう可能性が高いため、一度店頭で売り切れてしまうと、次に買えるのはかなり先になってしまうでしょう。

おむつの対策

紙おむつに関してできる対策は、実は「たくさん備蓄しておく」ことしかありません。これは紙おむつが果たしている機能を代替できるアイテムが他に無いからです。布おむつを思いつく方がおられるかもしれませんが、布おむつは水で洗わなければならないので、ライフラインが止まった場合にはおむつを洗えなくなってしまいます。

おむつはかさばるので家に1~2パック程度しかないご家庭も多いかと思いますが、紙おむつが無い状態での育児がどんな地獄になるかは少し想像するだけで分かるはずです。あればあるほどいざという時に有利なので、多めに買って家に置いておくのが良いでしょう。

ただ、おむつ世代の子どもはどんどん大きくなっていくため、3パック以上備蓄する場合は1サイズ上の商品を何パックか混ぜておく検討をお忘れなく。また、水が使えない状況を想定し、おしりふきやウェットティッシュも一緒に備蓄すると良いでしょう。

画像: おむつの対策

まとめ

今回は、災害時に困ることの中でも、特に共働きの子育て世帯が直面する課題について紹介しました。今回は「子どものお迎え」と「おむつの備蓄」の話だけでしたが、災害が起きれば断水・停電・ガス停止や物流ストップなど、他にも多くの困難に見舞われます。もし、まだ他に備えられていないことがあれば、是非すぐに取り組んでいただけたらと思います。

そして最後に一番大切なポイントをお伝えします。それは、どれだけ大量におむつを備蓄しても、どれだけキチンとお迎えに行く計画を立てても、「大切な子どもが死んでしまっては意味が無い」という事です。何よりもまず、命を守ることが防災対策の最優先事項です。おむつを備蓄するよりも、家具を固定したり建物の耐震化を進める事の方がはるかに大切です。子どもを守るためにも、まずはそこから見直すことを心がけてもらいたいと思っています。

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